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天狐あやかし秘譚
第54章 和顔愛語(わがんあいご)
「おう!瀬良ちゃん、どうやった?」
戻ってきた瀬良に土御門が軽く声を掛ける。瀬良の頬がまたピクリと動く。
「貧乏神の力を一時的に抑制する呪法があることがわかりました」

瀬良によると、とある御札を使った術式で貧乏神の力を一時的に抑え込むことができるらしい。土御門が瀬良の持ってきた資料の束に目をやる。

「なるほど・・・黄龍ねえ・・・」
「そうですね。五行説では貧乏神は水気由来。なので土性である黄龍がその力を抑えるのだそうです。そもそも黄龍自体、金運上昇みたいな意味がありますし、その点でも相克関係にあるのでしょう。」
「この符なら、祭部に頼めばすぐ作ってくれそうやな」
「ですね・・・ただ、おそらく貧乏神の力を抑えつけ続けるには相当量の呪力が必要かと・・・」
「そんなん心配いらへん。綾音はんには超妖力を持った、強い味方がいるやさかいな!」
な?と土御門が、ダリの方を見る。ダリは面倒そうにため息を付くが、私の願いだということもあってか、貧乏神の力を抑えつける役を引き受けてくれた。

なんとなく解決の光明が見えてきた。
貧乏神の力が抑えられれば、試合を見せても大丈夫かもしれない。彼の『推しのチームが勝つところを見たい』という願いを叶えられるかもしれないのだ。

これですべてがうまくいく・・・と思ったのだが・・・。
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