この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第5章 天佑神助(てんゆうしんじょ)
狂骨がダリに右手を上げて襲いかかろうとするが、ダリが左手を一振りすると右手が肩口から砕ける。
ダリが通り過ぎたあと、狂骨が逃げようとするが、ダリが右手の槍をトンと地面に軽く叩きつけると、その両の足が砕け、その場に崩れ落ちた。

「動くな、と、言っただろう」

そして、私のもとに来るとそっと膝を折った。

「すまない。綾音・・・怖い思いをさせた。それで?清香ちゃんとは?」
「あ・・・あの・・・狂骨の胸の中に、清香ちゃんが・・・吸収されかけていて、でも、でも、あの子を助けて欲しいの。ダリ・・・できる?」

水に混ざったインクを取り出すようなもの、と御九里は言っていた。
もしかしたら不可能なのかもしれない。でも、願わずにはいられなかった。

「ダリ・・・お願い・・・清香ちゃんを助けて・・・」
衣の袖口をキュッと掴む。
ふわりと、ダリが私の頭に手を載せる。温かい、手だった。

「主の求め、たしかに受け取ったぞ」
すっくと立ち上がる。
「案ずるな・・・我は天狐・・・ダリぞ」

狂骨の方を向き、凶悪な妖怪に歩み寄る。

トン・・・

手にした槍を無造作に胸に突き立てた。

ひぎゃあああ!!

狂骨が奇妙な叫び声を上げ、のたうち回る。

「真澄鏡 清し清しと 別かるるものを ぬばたまの 夜の夜に鳴く かささぎよ去ね」
歌うように清涼な声音がダリの口元から流れる。
リン、と清らかな鈴の音が響いた気がした。

ただそれだけだった。

「狂骨が・・・」
狂った鬼の骨が、夜の闇に溶けるように消えていく。御九里が命からがら、それでも足止めすらできなかった凶悪な大妖が、いともたやすく、闇に消えていった。
狂骨が消えると、心なしか周囲の空気が軽くなった気がする。そして、先程まで聞こえていなかった虫の声が響き出す。

通常の秋の夜に戻っていった。

ダリが狂骨の消えたあたりにしゃがみ込む。抱え上げたのは・・・
「清香ちゃん・・・」
ダリの腕の中で、まるで眠っているように目を閉じている清香ちゃんの顔は、写真で見た、在りし日の顔だった。
/172ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ