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天狐あやかし秘譚
第56章 【第13話:天邪鬼】三人成虎(さんにんせいこ)

しかし、当の土御門様は、『神宝奪われ、敵の正体もなんもわからん。こんな体たらくや。実際に起こした失態に比べたら軽すぎる処罰や』と言って笑っていた。
そんなこんながあったものの、先ほど、やっと最後の事務書類を書き上げ、そのチェックが済んだ。気づけばカレンダーは既に2月になっていた。あの事件があったのが1月初旬のことだったので、事後処理をしていただけで、あっという間に1ヶ月弱の時が流れてしまったことになる。
土御門様もだいぶ消耗されている・・・。
「あの・・・」
声を上げようとした矢先、私の言葉に土御門様の声が重なった。
「お疲れ様。京都からだいぶ根詰めたさかいな・・・。もう、今日は帰ってええで」
でも・・・、と言おうと思ったが、土御門様がじっと私の目を見つめてきたので、何も言えなくなってしまった。彼なりに、私のことを気遣っていることがわかったからだ。
「わかりました。失礼いたします」
私は頭を下げて、土御門様の執務室を後にした。その私の背中に追い打ちをかけるように土御門様の声がした。
「明日から3日休暇や。久しぶりにゆっくりし、な?瀬良ちゃん」
私は立ち止まり、背中でその言葉を受け取った。
休暇・・・か・・・。
ちくりと胸が痛んだ。
「わかりました」
振り返らずに言った。
「おう!またな」
一応礼儀かと思い、振り返り、一礼する。
「失礼いたします」
廊下に出て、土御門様の執務室の扉を閉めると、一瞬にして夜の闇に放り出されたようになる。昭和20年代に作られた古い作りの庁舎は静まり返っていた。もう、職員は殆ど帰ってしまったのだろう。この時間にいるのは宿直をしている者くらいだ。当然、廊下に明かりなどついていない。
しばらくすると、目が闇に慣れてきたのか、窓から落ちる星明かりでぼんやりと廊下の輪郭が浮かび上がった。私はため息をひとつつき、更衣室に向かった。
休暇・・・ですか。
「あなたが辛いとき、私を傍らに置いてはくれないんですね・・・。」
ポツリと呟く。言葉にすると、なおさら、胸がツキンと痛んだ。
そんなこんながあったものの、先ほど、やっと最後の事務書類を書き上げ、そのチェックが済んだ。気づけばカレンダーは既に2月になっていた。あの事件があったのが1月初旬のことだったので、事後処理をしていただけで、あっという間に1ヶ月弱の時が流れてしまったことになる。
土御門様もだいぶ消耗されている・・・。
「あの・・・」
声を上げようとした矢先、私の言葉に土御門様の声が重なった。
「お疲れ様。京都からだいぶ根詰めたさかいな・・・。もう、今日は帰ってええで」
でも・・・、と言おうと思ったが、土御門様がじっと私の目を見つめてきたので、何も言えなくなってしまった。彼なりに、私のことを気遣っていることがわかったからだ。
「わかりました。失礼いたします」
私は頭を下げて、土御門様の執務室を後にした。その私の背中に追い打ちをかけるように土御門様の声がした。
「明日から3日休暇や。久しぶりにゆっくりし、な?瀬良ちゃん」
私は立ち止まり、背中でその言葉を受け取った。
休暇・・・か・・・。
ちくりと胸が痛んだ。
「わかりました」
振り返らずに言った。
「おう!またな」
一応礼儀かと思い、振り返り、一礼する。
「失礼いたします」
廊下に出て、土御門様の執務室の扉を閉めると、一瞬にして夜の闇に放り出されたようになる。昭和20年代に作られた古い作りの庁舎は静まり返っていた。もう、職員は殆ど帰ってしまったのだろう。この時間にいるのは宿直をしている者くらいだ。当然、廊下に明かりなどついていない。
しばらくすると、目が闇に慣れてきたのか、窓から落ちる星明かりでぼんやりと廊下の輪郭が浮かび上がった。私はため息をひとつつき、更衣室に向かった。
休暇・・・ですか。
「あなたが辛いとき、私を傍らに置いてはくれないんですね・・・。」
ポツリと呟く。言葉にすると、なおさら、胸がツキンと痛んだ。

