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天狐あやかし秘譚
第56章 【第13話:天邪鬼】三人成虎(さんにんせいこ)

☆☆☆
すっかり、遅くなってしまった。あの後、友人の咲月(さつき)と香菜と一緒に下校し、途中でクレープ屋に寄り道、そこでもたっぷり1時間は話をしてしまった。学校近くの駅で別れて、電車に乗り、自宅最寄りの駅についた頃には既に午後7時になろうとしていた。あまり遅くなると母に叱られる。
日が長くなったとはいえ、2月である。7時になれば日はとっぷりと暮れてしまっている。私が住んでいるところは、急行が止まらないような小さな駅であり、駅前こそ少しはお店があるものの、少し離れるとあっという間に住宅街になってしまう。住宅街は街灯こそあるもものの、人通りは少なく、うら寂しい感じは拭えなかった。
早く家に帰ろう。
足をいつもより早める。たたたたた、と自分がアスファルトに刻む足音だけが響いていた。
たたたたた
たたたたた
ととととと
たたたたた
ん?
何か違和感があった。足を止める。周囲は静寂に包まれた。どこかの家がカレーを作っているのだろうか、スパイスの匂いがふわっと漂ってくる。
気のせいだろうか?
たたたたた
たたたたた
ととととと
たたたたた・・・
また歩き出し、同じように妙なことに気づく。明らかに自分の足音ではない物音が聞こえる。しかも、私が止まるとそれも止まる。
どこかに、音が反射している?
それが最も合理的な答えだと思った。自分が立てた足音が、住宅の壁かなんかに反響して少しズレて聞こえる・・・。そうなのだろうと思い直した。
たたたたた
とっとととっっと
・・・違う。
リズムが違う。
反響なら、音の高さが変わったとしても、リズムが変わるわけがない。
そして、また私が止まると止まる。
後、家までは10分くらいある。
明らかに後ろに何かがいる、という思いに囚われている私は、怖くて仕方がなかった。
一気に家まで駆けていこうか・・・
そう思ったとき。
ぷん、と強烈な臭いがあたりに立ち込めた。まるで獣がいるような、生臭くてヌメッとした嫌な空気。思わずポケットからハンカチを取り出して鼻と口に当てる。
何?
そして後ろを振り向いてしまった。
そこには・・・。
・・・!?
すっかり、遅くなってしまった。あの後、友人の咲月(さつき)と香菜と一緒に下校し、途中でクレープ屋に寄り道、そこでもたっぷり1時間は話をしてしまった。学校近くの駅で別れて、電車に乗り、自宅最寄りの駅についた頃には既に午後7時になろうとしていた。あまり遅くなると母に叱られる。
日が長くなったとはいえ、2月である。7時になれば日はとっぷりと暮れてしまっている。私が住んでいるところは、急行が止まらないような小さな駅であり、駅前こそ少しはお店があるものの、少し離れるとあっという間に住宅街になってしまう。住宅街は街灯こそあるもものの、人通りは少なく、うら寂しい感じは拭えなかった。
早く家に帰ろう。
足をいつもより早める。たたたたた、と自分がアスファルトに刻む足音だけが響いていた。
たたたたた
たたたたた
ととととと
たたたたた
ん?
何か違和感があった。足を止める。周囲は静寂に包まれた。どこかの家がカレーを作っているのだろうか、スパイスの匂いがふわっと漂ってくる。
気のせいだろうか?
たたたたた
たたたたた
ととととと
たたたたた・・・
また歩き出し、同じように妙なことに気づく。明らかに自分の足音ではない物音が聞こえる。しかも、私が止まるとそれも止まる。
どこかに、音が反射している?
それが最も合理的な答えだと思った。自分が立てた足音が、住宅の壁かなんかに反響して少しズレて聞こえる・・・。そうなのだろうと思い直した。
たたたたた
とっとととっっと
・・・違う。
リズムが違う。
反響なら、音の高さが変わったとしても、リズムが変わるわけがない。
そして、また私が止まると止まる。
後、家までは10分くらいある。
明らかに後ろに何かがいる、という思いに囚われている私は、怖くて仕方がなかった。
一気に家まで駆けていこうか・・・
そう思ったとき。
ぷん、と強烈な臭いがあたりに立ち込めた。まるで獣がいるような、生臭くてヌメッとした嫌な空気。思わずポケットからハンカチを取り出して鼻と口に当てる。
何?
そして後ろを振り向いてしまった。
そこには・・・。
・・・!?

