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天狐あやかし秘譚
第56章 【第13話:天邪鬼】三人成虎(さんにんせいこ)

夜の住宅街を背景に、身の丈が2メートルはあるかという大きなナニカが立っていた。ナニカ、という曖昧な表現をしたのは、ちょうど背後にある街灯に後ろから照らされてその顔形などは見ることが出来なかったこと、そして、その体躯が明らかに異常であり、私が知っているどの生き物にも似ていないことによる。
腕が異常に長い。肩からだらりと垂れ下がった腕は、身体の大きさに比しておかしなほど細く、長かった。身をかがめているわけではないのに、指の先が足の膝の下にまで到達している。また、膝の位置もおかしい。太ももが長く、また太いのに比して、膝が短かった。上半身に行くほど大きくなり、下半身に向かって細く小さくなる。奇妙なバランスの生き物だった。
「はあああ・・・・」
それが口を開けて息を吐いた。
明らかに周囲に立ち込める臭気はこいつが吐き出しているものだということがわかる。
そして、今目の前にいる、この『ナニカ』は間違いなく人外のものだ。
「はあああ・・・はあ・・・」
逃げ・・・なくては。
だが、とてもじゃないが、これに背中を見せる気にはなれない。背中を見せた瞬間にアレが跳躍してきて、あの長くて不気味な手で私を捕まえるシーンの映像が頭に勝手に湧いてきてしまう。
私がジリジリと後ずさると、ソイツが不意に顔を上げた。今まで顔が見えなかったのは、どうやら肩まである髪が顔にかかっていたのもあるようだった。顔を上げたことで目が顕になる。
「ひい!」
その目は赤く燃えるようだった。
それを見て、弾かれるように私は走り出していた。
殺される!
走りながら頭の中には昼間、学校で京依ちゃんに言われた言葉が頭をよぎっていた。
理科教室から教室に帰る途中、最後になった私の前に立ちふさがるように立って、彼女は言ったのだ。
『玲ちゃん、鬼に、狙われているよ』
と。
腕が異常に長い。肩からだらりと垂れ下がった腕は、身体の大きさに比しておかしなほど細く、長かった。身をかがめているわけではないのに、指の先が足の膝の下にまで到達している。また、膝の位置もおかしい。太ももが長く、また太いのに比して、膝が短かった。上半身に行くほど大きくなり、下半身に向かって細く小さくなる。奇妙なバランスの生き物だった。
「はあああ・・・・」
それが口を開けて息を吐いた。
明らかに周囲に立ち込める臭気はこいつが吐き出しているものだということがわかる。
そして、今目の前にいる、この『ナニカ』は間違いなく人外のものだ。
「はあああ・・・はあ・・・」
逃げ・・・なくては。
だが、とてもじゃないが、これに背中を見せる気にはなれない。背中を見せた瞬間にアレが跳躍してきて、あの長くて不気味な手で私を捕まえるシーンの映像が頭に勝手に湧いてきてしまう。
私がジリジリと後ずさると、ソイツが不意に顔を上げた。今まで顔が見えなかったのは、どうやら肩まである髪が顔にかかっていたのもあるようだった。顔を上げたことで目が顕になる。
「ひい!」
その目は赤く燃えるようだった。
それを見て、弾かれるように私は走り出していた。
殺される!
走りながら頭の中には昼間、学校で京依ちゃんに言われた言葉が頭をよぎっていた。
理科教室から教室に帰る途中、最後になった私の前に立ちふさがるように立って、彼女は言ったのだ。
『玲ちゃん、鬼に、狙われているよ』
と。

