この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第57章 自縄自縛(じじょうじばく)
抱きしめるような格好をしているが、その腕の中には何もない。京依の足元に、ひらりと人形に切った和紙が落ちているだけだった。

「玲ちゃん・・・どこ?玲ちゃん!?」

そう、こんな事態になることも想定していた。鬼が本物の玲子のもとに行かないように、私は人形で身代わりを作ったのだ。あやかしになりかかっていた京依には、和紙の人形に玲子の唾液を染み込ませて作った身代わりの護符が、玲子自身に見えていたに違いない。

玲子がいないことに気づいた京依がゆらりと立ち上がり、私の方を睨みつけた。その目は真っ赤に染まったままだった。

「玲ちゃんを・・・どこに隠したああ!!!」

長い両腕が私に向かって襲いかかってきた。しまった、と思ったときには遅く、術を発動する間もなく、私はその腕につかまってしまった。巨大な右手で首を絞められ、左手で腕を掴まれる。これでは術も使えないし、そもそも身動きすら取れない。
まるで、万力のような力で締め上げられ、腕と首の骨が、ミシリと嫌な音を立てていた。

まずい・・・

もし、京依が私を殺してしまったら・・・。
ダメだ、そうなれば、京依は完全に鬼道に堕ちてしまう。人間に戻ることができなくなってしまう。

ダメだ・・・やめて・・・やめて・・・!
どうして、ダメだったの?何が間違っていたの?

痛みと苦痛で涙が滲む目を薄っすら開くと、京依の赤く燃える目が見えた。
そして、その瞳からは・・・

涙・・・?

それを見た時、私の中で何かが繋がった気がした。

ああ・・・そうか、そうだったんだ・・・。
さっき、京依は叫んでいたではないか。
離れないで、行かないで・・・そう、そして、何度も、何度も、何度も、
彼女の名を・・・。

そう・・・私、間違っていたんだ・・・

グイグイと首を絞め上げられる。私の体は宙に浮き上がり、ばたつかせた足が虚しく空を切る。

間違った。間違っていたんだ。
なんでわからなかったんだろう・・・。

どういうわけか、この時、頭に思い浮かんだのは、浦原綾音の顔だった。
そう、きっと、綾音だったら、あの清らかな心の持ち主だったら、この子の心の奥にある悲しみに、苦しみに、もっともっと早く気付いたに違いない。彼女を救えたに違いない。
/754ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ