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天狐あやかし秘譚
第57章 自縄自縛(じじょうじばく)
呼吸がままならず、意識が遠くなっていく。ジンジンと頭がしびれ、唇が震える。
やっぱり・・・私、こんな汚れた女じゃ・・・ダメ・・・なんだ・・・

すうっと意識が闇に溶けそうになる。

浦原綾音・・・
ああ・・・ずるい、なあ・・・。
あんなにあったかいところにいて。
何でも持っていて・・・本当に・・・。
死ぬのかな?私、ここで、死ぬのかな?

不思議と死ぬのは怖くはなかった。ただ、ただ、悔しい気持ちが湧いてくる。

なんでよ・・・私ばっかり、何も手に入れられないで、こんなところで・・・。

浦原綾音のように生きたかった。あの子みたいに、なんの屈託もなく、好きな人に好きと言って、抱きしめてもらって、たくさん・・・たくさん甘えて・・・。

ああ、せめて・・・せめて、後もう一回だけ・・・あなたに・・・あなたの腕に抱かれたかった・・・

「つ・・・ち・・・み・・・か・・・ど・・・」

無意識に唇が動いたその時、ドゴン!と大きな衝撃が私を襲った。正確には私を吊し上げている京依を襲ったのだ。その衝撃のせいで京依の手が緩み、私の身体はそのまま地面に落とされる。崩れ落ちるように膝をつき、喉を押さえて必死に呼吸をしようとするが、息がうまく吸えない。ヒューヒューと喘息のような呼吸音が響き、何度も咳き込んでしまう。

何!?
誰かが京依の後ろから攻撃をした?

目がよく見えない。薄っすらと目を開き、片膝をついてうずくまる京依の背後に目をやる。そこに現れた人影を見て、私は信じられない気持ちになった。
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