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天狐あやかし秘譚
第58章 【第14話 辻神】死生有命(しせいゆうめい)

☆☆☆
「宝生前」
先日の管狐に関する報告書をまとめていると、我が祭部衆のボス、大鹿島様から声がかかる。はい、と返事をしてそちらを振り仰ぐと、ちょうどパソコン画面から顔を上げた大鹿島様と目が合った。
「レポートは後どのくらいかかりますか?」
そんなに、これは急ぐのでしょうか・・・。そう訝しく思いながらも、あと小一時間ほどですと答えると、彼女はやや視線を左上に持ち上げて思案顔をした。
「それでは、それは後回しで良いので、占部の方に行ってください。応援要請が来ています」
占部から?・・・しかし・・・
私は手元の端末の画面を見る。時刻は16時を回っており、これから応援となると、今日は帰りが大分遅くなりそうだ。明日は1限から大学の方の講義が入っているのであまり遅くなりたくないのだが・・・。
「九条くんや敷島さんではまずいのでしょうか?」
九条くんは私と同じ『属』の位階を持っている。敷島さんは位階こそ授かっていないが、大鹿島様の懐刀と言われるほどの実力の持ち主だ。全く遜色はないはずである。
「先方からの指名なのです。どうやらあなたの持つ『知識』の方を求めているようです」
つまり、陰陽師としての実力よりも、私の民俗学者としての知見が必要だと?
そう聞くと若干興味が湧いてきた。要は私のフィールドに近い事案が起こっている、ということだ。
少し考えたが、引き受けることにした。まあ、そもそも、上司からの指示なので基本『断る』という選択肢はないのであるが・・・。
「わかりました」
だが、直後、私はいたく後悔することになる。
「良かったです。これで土門さんも喜ぶことでしょう」
・・・
依頼主は、あれか・・・千里眼土門・・・
若干・・・いや、結構、嫌な予感がする。
私の脳裏に、占部衆筆頭土門杏里の、例のニカッと笑う姿がよぎった。
「宝生前」
先日の管狐に関する報告書をまとめていると、我が祭部衆のボス、大鹿島様から声がかかる。はい、と返事をしてそちらを振り仰ぐと、ちょうどパソコン画面から顔を上げた大鹿島様と目が合った。
「レポートは後どのくらいかかりますか?」
そんなに、これは急ぐのでしょうか・・・。そう訝しく思いながらも、あと小一時間ほどですと答えると、彼女はやや視線を左上に持ち上げて思案顔をした。
「それでは、それは後回しで良いので、占部の方に行ってください。応援要請が来ています」
占部から?・・・しかし・・・
私は手元の端末の画面を見る。時刻は16時を回っており、これから応援となると、今日は帰りが大分遅くなりそうだ。明日は1限から大学の方の講義が入っているのであまり遅くなりたくないのだが・・・。
「九条くんや敷島さんではまずいのでしょうか?」
九条くんは私と同じ『属』の位階を持っている。敷島さんは位階こそ授かっていないが、大鹿島様の懐刀と言われるほどの実力の持ち主だ。全く遜色はないはずである。
「先方からの指名なのです。どうやらあなたの持つ『知識』の方を求めているようです」
つまり、陰陽師としての実力よりも、私の民俗学者としての知見が必要だと?
そう聞くと若干興味が湧いてきた。要は私のフィールドに近い事案が起こっている、ということだ。
少し考えたが、引き受けることにした。まあ、そもそも、上司からの指示なので基本『断る』という選択肢はないのであるが・・・。
「わかりました」
だが、直後、私はいたく後悔することになる。
「良かったです。これで土門さんも喜ぶことでしょう」
・・・
依頼主は、あれか・・・千里眼土門・・・
若干・・・いや、結構、嫌な予感がする。
私の脳裏に、占部衆筆頭土門杏里の、例のニカッと笑う姿がよぎった。

