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天狐あやかし秘譚
第58章 【第14話 辻神】死生有命(しせいゆうめい)

☆☆☆
「宝生前さん!いやあ、お忙しいところ、本当に申し訳ないのです!!」
占部の部屋を訪ねると、奥から土門がすっ飛んできた。30代のなかなかに美形に属するのではないかという女性であるが、相変わらず不思議な出で立ちをしていた。
服は紫をベースにした貫頭衣風で、あちこちに金糸で不思議な文様が描かれている不思議な着ており、髪の毛は美しいストレートだが、見る角度によってはこれも紫に見えるのだ。さらに、化粧は濃くはないものの、紫色のアイシャドーを強く入れていて、これもまたエキセントリックな外見に磨きをかける一因となっている。なんというか、全体的にアフリカなどにいそうな女シャーマンを彷彿とさせるのだ。その話し方も相まって、良く言えば個性的、悪く言えばたいそう変わった人、という印象を周囲に与える。
しかし、彼女の持つ摩訶不思議さの真骨頂は、実際は、その能力の方にある。
千里眼の二つ名を持つ彼女の際立った能力は、陰陽寮の何者の追随も許さないほどの占術である。一説には、それは占術を越えて『予知能力』なのではないかという噂もあるくらいだ。
こんな、一癖も二癖もある土門は、もし陰陽寮の中で『変な人ランキング』なるアンケートを取ったら間違いなく1位、2位を争うことになるだろうと思われる女性なのだが、私にとって一番『変わっている』と思うのは・・・
「あなたと一緒に仕事ができて嬉しいのです!」
ぎゅううっと私の手を両手で包み込むように握り、ブンブンと振り回す。手が子どものようにしっとりと温かい。確か自分よりも10近く年下のはずだが、もっと幼いのではないかと勘違いしてしまいそうになる。
そう、『変わっている』のはここだ。この女性は私のことが『好き』・・・おそらく、多分・・・信じられないことだが、恋愛対象として『好き』なようなのである。
ちなみに私はゲイである。
別に隠す必要は感じないので、聞かれればそう答えるが、特に聞かれなければ言うことはない。大学や陰陽寮の同僚は私がゲイであることを知っている人と知らない人は半々といったところだと思う。そして、情報屋を自認する土門は当然『知っている』側だ。
「宝生前さん!いやあ、お忙しいところ、本当に申し訳ないのです!!」
占部の部屋を訪ねると、奥から土門がすっ飛んできた。30代のなかなかに美形に属するのではないかという女性であるが、相変わらず不思議な出で立ちをしていた。
服は紫をベースにした貫頭衣風で、あちこちに金糸で不思議な文様が描かれている不思議な着ており、髪の毛は美しいストレートだが、見る角度によってはこれも紫に見えるのだ。さらに、化粧は濃くはないものの、紫色のアイシャドーを強く入れていて、これもまたエキセントリックな外見に磨きをかける一因となっている。なんというか、全体的にアフリカなどにいそうな女シャーマンを彷彿とさせるのだ。その話し方も相まって、良く言えば個性的、悪く言えばたいそう変わった人、という印象を周囲に与える。
しかし、彼女の持つ摩訶不思議さの真骨頂は、実際は、その能力の方にある。
千里眼の二つ名を持つ彼女の際立った能力は、陰陽寮の何者の追随も許さないほどの占術である。一説には、それは占術を越えて『予知能力』なのではないかという噂もあるくらいだ。
こんな、一癖も二癖もある土門は、もし陰陽寮の中で『変な人ランキング』なるアンケートを取ったら間違いなく1位、2位を争うことになるだろうと思われる女性なのだが、私にとって一番『変わっている』と思うのは・・・
「あなたと一緒に仕事ができて嬉しいのです!」
ぎゅううっと私の手を両手で包み込むように握り、ブンブンと振り回す。手が子どものようにしっとりと温かい。確か自分よりも10近く年下のはずだが、もっと幼いのではないかと勘違いしてしまいそうになる。
そう、『変わっている』のはここだ。この女性は私のことが『好き』・・・おそらく、多分・・・信じられないことだが、恋愛対象として『好き』なようなのである。
ちなみに私はゲイである。
別に隠す必要は感じないので、聞かれればそう答えるが、特に聞かれなければ言うことはない。大学や陰陽寮の同僚は私がゲイであることを知っている人と知らない人は半々といったところだと思う。そして、情報屋を自認する土門は当然『知っている』側だ。

