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天狐あやかし秘譚
第59章 合縁奇縁(あいえんきえん)

♡ーーーーー♡
【合縁奇縁】人の交わりには互いに気がよく合う合わないがあって、それは不思議な縁によるのだということ。
縁は異なもの味なもの、みたいな。
♡ーーーーー♡
ここは・・・どこ?
意識を取り戻した、ということは分かった。頭を振って、辺り見回す。周囲は暗くて何も見えなかった。だけど、何か、不思議な匂いがする。なんだろう・・・古い家屋の匂いだろうか?
だんだん目が慣れてくると、自分が見知らぬ日本家屋の一部屋にいるようだとわかった。古い旅館というか、古民家というか、とにかくそんな感じがする。部屋は10畳ほどだろうか。その四方を襖で囲まれていた。
私は一体どうしてここにいるのだろう?
自分の姿をみてみると、通勤に使っているスーツのままだ。今日はクライエントの所にいく予定があったので、それ用のスーツを着て・・・、そのまま出先から上がった・・・はず。それから・・・なんだっけ?どうしたんだっけ?
そうだ、遅くなってしまったので、惣菜を買おうとデパートに寄って、そして買い物をして、電車に乗って、最寄り駅で降りて・・・
そこまで記憶を辿ってやっと思い出した。そうだ、家に帰ろうと夜道を歩いてるところ、公園に入る前の四つ角で変な人影を見たんだ。変な人がいると思って避けて歩こうとしたら、こっちを見てきたんだ。その目が・・・その目が・・・
ひゅうっと私は息を吸った。
その時のことを思い出してしまったからだ。
その人影の目は赤い涙に濡れていた。まるで、それは目から血の涙を流しているようにも見えた。怖くて悲鳴を上げようとした瞬間、まるで耳元で囁かれるような声がした。
「のまれてきえる」
瞬間、眼の前が真っ暗になった・・・。
そうだ、あそこで私の記憶は途切れている。じゃあ、いったいここはどこ?私は一体どうなったの?
瞬間的に思ったのは、自分が変な薬を使って気絶させられて誘拐されたのではないかということだった。だとしたら、今、その犯人たちがいないこの隙に、ここから逃げ出すべきではないだろうか?
はっと気がついて、周囲を見た。いつもつかっているベージュのバックの中にスマホがあったはずだ。それがあればここがどこだかもわかるし、助けも呼べる。
しかし、残念ながら手荷物の類は一切周囲になかった。
【合縁奇縁】人の交わりには互いに気がよく合う合わないがあって、それは不思議な縁によるのだということ。
縁は異なもの味なもの、みたいな。
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ここは・・・どこ?
意識を取り戻した、ということは分かった。頭を振って、辺り見回す。周囲は暗くて何も見えなかった。だけど、何か、不思議な匂いがする。なんだろう・・・古い家屋の匂いだろうか?
だんだん目が慣れてくると、自分が見知らぬ日本家屋の一部屋にいるようだとわかった。古い旅館というか、古民家というか、とにかくそんな感じがする。部屋は10畳ほどだろうか。その四方を襖で囲まれていた。
私は一体どうしてここにいるのだろう?
自分の姿をみてみると、通勤に使っているスーツのままだ。今日はクライエントの所にいく予定があったので、それ用のスーツを着て・・・、そのまま出先から上がった・・・はず。それから・・・なんだっけ?どうしたんだっけ?
そうだ、遅くなってしまったので、惣菜を買おうとデパートに寄って、そして買い物をして、電車に乗って、最寄り駅で降りて・・・
そこまで記憶を辿ってやっと思い出した。そうだ、家に帰ろうと夜道を歩いてるところ、公園に入る前の四つ角で変な人影を見たんだ。変な人がいると思って避けて歩こうとしたら、こっちを見てきたんだ。その目が・・・その目が・・・
ひゅうっと私は息を吸った。
その時のことを思い出してしまったからだ。
その人影の目は赤い涙に濡れていた。まるで、それは目から血の涙を流しているようにも見えた。怖くて悲鳴を上げようとした瞬間、まるで耳元で囁かれるような声がした。
「のまれてきえる」
瞬間、眼の前が真っ暗になった・・・。
そうだ、あそこで私の記憶は途切れている。じゃあ、いったいここはどこ?私は一体どうなったの?
瞬間的に思ったのは、自分が変な薬を使って気絶させられて誘拐されたのではないかということだった。だとしたら、今、その犯人たちがいないこの隙に、ここから逃げ出すべきではないだろうか?
はっと気がついて、周囲を見た。いつもつかっているベージュのバックの中にスマホがあったはずだ。それがあればここがどこだかもわかるし、助けも呼べる。
しかし、残念ながら手荷物の類は一切周囲になかった。

