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天狐あやかし秘譚
第59章 合縁奇縁(あいえんきえん)

とにかく、逃げなくちゃ・・・。
私はできるだけ音を立てないように一番近い襖の方に寄っていった。耳をそばだてると特に物音はしない。人はいないみたいだ。ここがもしほんとうに日本家屋なら、どこかから縁側にでも出られれば逃れられるかもしれない。
私はそっと襖を開いた。運よく縁側なら、と思ったが、そちらもやっぱり和室のようで、ついでに言えば、今いる部屋より暗く、中を見通すことはできなかった。なんとなく今いる部屋より広い気はする。
とにかく、出口じゃないのならと思い、襖をそっと閉じようとした矢先、何かがこそりと動いたように見えた。犯人?と思って身構えたがどうやら違うようだ。天井から何かが吊り下がっているようにも見える。なんだろうと思って、目を凝らしてみると・・・。
え!?
それは、帯のようなもので両の手首を固定され、天井から吊り下げられている何人もの若い女性だった。皆、だいたい自分と同じ20代前半から中盤くらいと思われた。そして、彼女らは、皆おしなべて全裸だった。
一体どういう・・・。
考え始めて、私はゾッとする。私と同じような女性が皆、裸に剥かれてぐったりしている。最後に見たのは男性の姿・・・。あれは、あれは・・・私にこれから起こることを暗示しているのではないだろうか?
早く逃げなくちゃ!
そう思い、振り返った時、眼の前に真っ黒い影のような男が立っていた。
「ひいぃ!」
音もなく忍び寄っていたのだろう。突然に眼の前に現れた影に驚き、私は腰が抜けたようになってしまう。その影は目のところがポッカリと穴が空いたようになっていた。
「ああ・・・いやああ・・・」
後ろ手でずって私はその男と距離を取ろうとする。すると必然的に、先ほど見た女性たちが吊し上げられている部屋に入っていくことになってしまう。
「に・・・が・・・さない」
黒い影は口だけがニヤリと笑って、そう言った。裂けるように笑った口の中は血の色に染まっている。
何あれ!?・・・人間じゃない!
涙が溢れてくる。手足が震えてうまく動けなかった。口がカラカラに乾き、舌が喉奥に張り付いたようになって、叫び声も出なかった。
「にげ・・・ないでよ・・・」
私はできるだけ音を立てないように一番近い襖の方に寄っていった。耳をそばだてると特に物音はしない。人はいないみたいだ。ここがもしほんとうに日本家屋なら、どこかから縁側にでも出られれば逃れられるかもしれない。
私はそっと襖を開いた。運よく縁側なら、と思ったが、そちらもやっぱり和室のようで、ついでに言えば、今いる部屋より暗く、中を見通すことはできなかった。なんとなく今いる部屋より広い気はする。
とにかく、出口じゃないのならと思い、襖をそっと閉じようとした矢先、何かがこそりと動いたように見えた。犯人?と思って身構えたがどうやら違うようだ。天井から何かが吊り下がっているようにも見える。なんだろうと思って、目を凝らしてみると・・・。
え!?
それは、帯のようなもので両の手首を固定され、天井から吊り下げられている何人もの若い女性だった。皆、だいたい自分と同じ20代前半から中盤くらいと思われた。そして、彼女らは、皆おしなべて全裸だった。
一体どういう・・・。
考え始めて、私はゾッとする。私と同じような女性が皆、裸に剥かれてぐったりしている。最後に見たのは男性の姿・・・。あれは、あれは・・・私にこれから起こることを暗示しているのではないだろうか?
早く逃げなくちゃ!
そう思い、振り返った時、眼の前に真っ黒い影のような男が立っていた。
「ひいぃ!」
音もなく忍び寄っていたのだろう。突然に眼の前に現れた影に驚き、私は腰が抜けたようになってしまう。その影は目のところがポッカリと穴が空いたようになっていた。
「ああ・・・いやああ・・・」
後ろ手でずって私はその男と距離を取ろうとする。すると必然的に、先ほど見た女性たちが吊し上げられている部屋に入っていくことになってしまう。
「に・・・が・・・さない」
黒い影は口だけがニヤリと笑って、そう言った。裂けるように笑った口の中は血の色に染まっている。
何あれ!?・・・人間じゃない!
涙が溢れてくる。手足が震えてうまく動けなかった。口がカラカラに乾き、舌が喉奥に張り付いたようになって、叫び声も出なかった。
「にげ・・・ないでよ・・・」

