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天狐あやかし秘譚
第59章 合縁奇縁(あいえんきえん)
☆☆☆
私は唐突に目を開いた。

主観的には一瞬の出来事だった。数秒前、私は宝生前の横を駆け抜け、怪異・・・おそらく辻神と思われる・・・に肉薄した。あわよくばそこで捕らえられれば一件落着、だったのだが、そうはいかなかった。

『のまれてきえる』

辻神が放った、言霊の呪が聞こえた。本来は、前を歩いていた20代の女性に向けられるはずだった呪いは私に作用し、たちまちこの身を絡め取ってしまう。そして、気づいたらここにいた。
周囲を見ると、時刻は夜。場所はどうやら山中にある村のようだった。左右に板葺きの粗末な家が立ち並んでいる。どれもこれも朽ちかけており、明かりが灯っているということもなければ、人がいる気配もない。

空を見ると、月がぼやっと昇っていることから、少しは周囲が見渡せるというものだ。

星が・・・見えませんね。

空には月はあるが、星はまったくなかった。それがここがこの世ではないこと、異界であることを如実に示していた。

もし、あの女性が捕まってしまったら、さぞかしパニクったでしょうね。

そう考えると、やっぱり身代わりになってよかった。
多分、今頃、宝生前は私に対して恨み言の一つも言っているかもしれない。・・・嫌われなきゃいいけどな・・・。

とりあえず宛もないので、歩き出すことにした。
だけどどっちに向かえば良いのでしょうねえ・・・

正面を見ると、おそらくそれは村の中に入る方向だった。高台に向けてやや傾斜がある。その先には周囲の家よりはまだしもマシそうな家がある。瓦葺きで、若干見栄えはするとは言え、遠目にも廃墟っぽい感じがする。

それともこちらでしょうか?
振り向くと、しばらく左右に貧相な小屋が立ち並ぶ道が続いており、そのままこの村の境界に続いているようだった。境界の向こうは、暗く沈んだ森になっている。

どっちにせよ不気味ですねえ・・・。
占う、ことにしましょう。

私は目を閉じた。目を閉じることにより、視覚をより研ぎ澄ます。・・・変な喩えだが、目ではなく、魂で視る・・・という感覚だ。
そのまま手を広げると、両腕それぞれに二重につけている木環が薄っすらと青白く光り輝く。式占盤は持ってきていない。今は、この簡易な呪具による占術を使うのがベストだろう。
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