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天狐あやかし秘譚
第6章 楚夢雨雲(そむううん)
まずは清香ちゃんを寝かしつけようというわけで、ころんとベッドに横たえる。私はベッドの下に座って彼女が寝ている枕元に顔を近づけるようにし、ダリはベッドの反対側に腰を掛けていた。そっと頭を撫でると、にこっとする。
「まま・・・おやすみなさい・・・」
なんか、いいな・・・こういうの。
「おやすみなさい・・・清香ちゃん」

目をつぶると、そのまま、すーっと眠りにつく。多分、疲れていたのだろう。
一応理屈は説明してもらったものの、いまいち実感はない。幽霊だった清香ちゃんが、こうして本物の人間みたいになって、私とダリの間ですやすや寝ているなんて・・・。

ああ、私も疲れたよ・・・。
今日一日、本当にいろんなことがありすぎた。
不動産屋さんは空振り、就職口は見つからない、清香ちゃんが縛られてて、それを守ろうとしたら狂骨とかいう巨大ドクロが現れて、宮内庁陰陽寮とかいうところの陰陽師がそれを払おうとして返り討ちにあって、挙げ句、殺されそうになったところを・・・・

ダリに助けられたんだ。

やっと家に帰ってきた。そう思って、ホッとしたら、身体がまた震えてきた。

「怖かった・・・よね・・・」

そっと、清香ちゃんの額を手のひらで撫でる。少し汗ばんでいるかな?
清香ちゃんも怖かったに違いない。ずっとずっと独りだったのに、急に鎖で縛られて、鬼の骨のようなやつに閉じ込められて・・・。ごめんね、怖かったはずなのに、私を守ろうとしてくれていたんだよね?

すっと肩に手がかかる。いつの間にかダリが私の横に同じような姿勢で座っていた。
ことんと、自然にダリの胸に頭を寄せてしまう。
ふわっとした温かさを感じ、これまで我慢していた涙が溢れる。

「怖かった・・・」

声が漏れる。一旦言葉にすると止まらない。

「も・・・もう、ダメかと思った・・・。私、死んじゃうかもって・・・ひとりで・・・怖かったよ」

ダリがギュッと肩を抱き寄せてくれる。
そのまま私が顔をあげると、そっとキスが降ってきた。

また、涙が頬を伝って、落ちた。
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