この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第60章 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)
視野の半分は相変わらず野づ霊のものであり、私から伸びた縁の糸の痕跡を追っている。糸はこの斜面の上まで続いていた。昼間であったり、土御門様の十二天将のように式神の視野の性質を変えられれば、もっと登りやすい道を見つけることができるかもしれないし、そもそももう少し広範囲にわたって操作できるタイプの式神なら、式神だけを上に送ることもできるかもしれない。

しかし、残念ながら、私の野づ霊は視野の切り替えにも遠距離操作にも対応していない。あくまで私の近くで私自身をサポートするのみなのだ。これは、基本的に射程が短いものが多い『土の術式』全般に言えることであり、土の術者の宿命といえる。

えっちらおっちらと暗い山道をなんとかして登っていくと、少し開けたところに出た。縁の糸がその場所の一点に吸い込まれていっているのが見えた。そこに懐中電灯を向けると、古い祠のようなものがある。

ここが、怪異の中心・・・?いや、違いますね。

そう、たしかに縁の糸はそこに吸い込まれているのだが、ここが怪異の中心ではないのは明白だった。祠を仔細に調べてみると、どうやら昔の石敢當(いしがんとう)のようだ。通常は村と道との境界を守るために辻などに置かれるものだ。

周囲を懐中電灯で照らしてみるが、今、私が登ってきた道と垂直に交わるように林道が走っているほかは、鬱蒼と生い茂る木々があるのみだ。特に村のようなものは見当たらない。ということは、あの木の向こうが昔は村だった・・・か、もしくはこの林道のどちらかの先に村があるか・・・ですかね。

そして、ここに縁の糸が吸い込まれているということは、この石敢當の中に土門がいる・・・わけないですよね。

さて、困ったぞ、と思う。たしかに石敢當は辻神を封じる働きのある石碑ではあるので、今回の事件に何らか関係があるはずですが、手がかりが途切れてしまったようにも感じた。
/841ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ