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天狐あやかし秘譚
第60章 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)

そうはいっても、これしか手がかりがないので、しばらく石敢當の周囲を調べたが、その時に、チリっと首筋に何かの気配を感じた。立ち上がり、慌てて周囲に注意を払う。
この気配・・・何か呪的なものが近づいている・・・?
野づ霊も私の足元で鎌首を上げ、あたりの様子を油断なく伺っていた。
あれは?
木の上の方からぼんやりと青白く光る何かがひらひらと舞い降りてきた。目を凝らすと、どうやらそれは蝶のようだ。しかも見覚えがある蝶だった。
夜魂蝶・・・ですね。
古来より、人が死んだとき、その魂が蝶になって飛び去る、と言われたり、誰かの魂が蝶になって帰って来る、みたいな話は枚挙に暇がない。つまるところ、蝶は死者の魂の象徴なのである。それが『夜魂蝶』である。そして、土門杏里は、その夜魂蝶を式神として使うのだった。
それは、陰陽寮で一番繊細で、一番美しい式神、と言われていた。
私が手を差し伸べると、夜に光るその蝶が、ひらひらと舞い降りてきた。青い燐光が、あたりに鱗粉のようにほろほろと振りまかれる。それは私の手のひらの上でニ度三度と羽ばたくと、ふわりと中空に溶けるように消えていった。
消えた蝶はかすかな光の明滅となり、その光が私に『情報』を流し込んできた。それは、土門が私に伝えようとした、残そうとしたものだった。
「なるほど・・・ね」
空を見上げる。そこには木々の隙間からでも伺える、満天の星がサラサラと輝いている。私はバックからスマホを取り出すと、陰陽寮に電話をかけた。かける先は、待機しているはずの・・・
「あ、冴守さんですか?宝生前です。今、例の件を調査中ですが、いくつか、分かったことがあります。それで、調べてほしいことがあるんですが・・・」
この気配・・・何か呪的なものが近づいている・・・?
野づ霊も私の足元で鎌首を上げ、あたりの様子を油断なく伺っていた。
あれは?
木の上の方からぼんやりと青白く光る何かがひらひらと舞い降りてきた。目を凝らすと、どうやらそれは蝶のようだ。しかも見覚えがある蝶だった。
夜魂蝶・・・ですね。
古来より、人が死んだとき、その魂が蝶になって飛び去る、と言われたり、誰かの魂が蝶になって帰って来る、みたいな話は枚挙に暇がない。つまるところ、蝶は死者の魂の象徴なのである。それが『夜魂蝶』である。そして、土門杏里は、その夜魂蝶を式神として使うのだった。
それは、陰陽寮で一番繊細で、一番美しい式神、と言われていた。
私が手を差し伸べると、夜に光るその蝶が、ひらひらと舞い降りてきた。青い燐光が、あたりに鱗粉のようにほろほろと振りまかれる。それは私の手のひらの上でニ度三度と羽ばたくと、ふわりと中空に溶けるように消えていった。
消えた蝶はかすかな光の明滅となり、その光が私に『情報』を流し込んできた。それは、土門が私に伝えようとした、残そうとしたものだった。
「なるほど・・・ね」
空を見上げる。そこには木々の隙間からでも伺える、満天の星がサラサラと輝いている。私はバックからスマホを取り出すと、陰陽寮に電話をかけた。かける先は、待機しているはずの・・・
「あ、冴守さんですか?宝生前です。今、例の件を調査中ですが、いくつか、分かったことがあります。それで、調べてほしいことがあるんですが・・・」

