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天狐あやかし秘譚
第60章 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)
☆☆☆
宝生前が夜魂蝶と邂逅した、ちょうどそのころ、異界では土門が群れをなす『辻神』と死の鬼ごっこを繰り広げていた。

黒い影のような『辻神』がうそうそと暗い廃村の道を歩いている。本来は道が交わった所、『辻』にしか現れることができない怪異のはずだが、この異界ではその限りではないようだ。何体もの黒い影が私を探して足が動かないまま滑るようにうろつく様は、B級のホラー映画を見ているようだった。

・・・あまり目は良くないみたいですね。

そう、よほど近くまで来ないと、あれらは私の姿を捉えることができないようだ。それで合点がいった。今回の事件の被害者は全て『辻神』のそばを通り過ぎようとしたり、近寄った時に被害にあっている。彼らは、怪我をさせられる人と、攫われる人に二分されていた。先ほど見た屋敷の中の光景、俯いていてよくわからないところもあったが、囚われていたのは全て年の頃が20代半ばくらいの髪の長い女性ばかりだった。

明確に『攫う基準』がある、ということですね。もしかしたら、それは怪異の好みなどではなく、実は狙っているのはたったひとりの『誰か』であるのにもかかわらず、目が悪いがゆえにそれに似た人を無差別に攫っている・・・のかもしれない。

そんな事を考えている内に、私が潜んでいる藪に一体『辻神』が近づいてくる。

私は呪符を一枚、右手に取り出し、そこ呪力を集中する。やはり、異界の性質のせいか、呪力の収束が悪い気がする。

『陰陽五行 歳星 死門 奇魂勧請』

ぼうと右手の木環が光り、その光が呪符に移っていく。その光に呪符が溶け、たちまち小さい蝶となった。

行け・・・夜魂蝶・・・

光の水脈を引いて、私の『蝶』が四方にひらひらと舞い上がる。目がよく見えない辻神はその光に引き寄せられるようにしてすすすっと移動していく。

まあ、これを繰り返していれば、しばらく時間稼ぎができそうです。
私は天を仰ぐ。相変わらずののっぺりとした星のない空。

後ろ側からがさりと音がした。いつの間にか後ろから接近してきた『辻神』がいたようだった。

おっと・・・危ない。油断していると、見つかってしまいそうです。
やっぱり数が多いですね・・・。
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