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天狐あやかし秘譚
第60章 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)
やりましたか!?

そう思ったのだが、ソレは崩れ落ちることはなかった。一瞬ふらりと体を震わせたが、倒れるまで至らず、再びこちらに顔を向けてきた。そこには、先程よりもさらに嫌らしい笑みが浮かんでいた。

しまった・・・
まさかここまでだったとは・・・!

おそらく力が抑えられているというもあるが、あの化け物の耐久力の強さを甘く見ていたというのもあった。ダメージがないわけではないが、全く意に介していない様子で再び私の方に迫ってくる。

一方、私の方はと言えば、今の一撃が効かないとなるとほとんど策はない。そもそもが戦闘向きの術式をさほど多く扱えないのだ。

せめて、気持ちだけは負けないように、唇を噛んでソイツを睨みつけることが、今の私にできる最大の抵抗だった。

殺されることはないとは思いますが・・・

手が再び伸び、私の襟首を両手で掴む。そしてソイツは無造作に私の衣服を左右に引き裂いた。

はああ・・・・
 はああ・・・・

再び生暖かい不気味な吐息が鼻にかかる。思わず顔をそらしたくなるが、ギンと睨みつけるのだけはやめなかった。ソイツの顔がまた迫ってくる。開いた口からべろりと赤く長い舌が伸びてきて、私の首筋をテロリと舐め上げてきた。

ぞわっと体中に鳥肌が立つ。
気持ちの悪さに体の芯が震えた。

更にソレは、私の首元、腋の下に顔を這わせる。何をしているのかと思ったが、その音を聞いて更にゾッとした。

スンスンと私のあちこちの匂いを嗅いでいるのだ。匂いを嗅いでは舌で腋の下や脇腹に舌を這わせてくる。そして、ビリビリと服を引き裂いては、そこから表れた肌を値踏みするかのように嗅ぎ回り、舐め尽くしていく。ソイツの舌や節くれだった指が身体のあちこちを這い回る不快感は想像を絶する。

ぐうぅ・・・

目を開けていられない。嫌悪感で頭が一杯でぎゅっと目を閉じて体を震わせる。ついに、ブラも剥ぎ取られ、私の身体を包むのは性器を隠す薄いパンツ一枚だけになっていた。

こいつは、こうして他の女も・・・

決して急ぐことはしない。じっくりじっくり衣服を剥ぎ取り、じっとりといやらしくその指や舌でなぶり尽くす・・・。
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