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天狐あやかし秘譚
第60章 雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)
私の乳首をつつっとソイツの指がなぞる。何処を触られても気持ち悪い。鳥肌が立ち、嫌悪感で背筋が凍る。足は自由に動くのだから、蹴飛ばしてやろうかと本気で思う。

その指がつーっと乳首からアンダーバスト、お臍の横を通り、ついに私の秘所のあたりに到達する。指がパンツにかかり、引き下ろそうとしているのを感じる。もちろん、こんなにじっくりやらなくても、いつだって剥ぎ取ることができたはずだ。それをこいつは、わざと恐怖や嫌悪感を煽るようにしているのだ。

罪状・・・ひとつ追加なのです・・・。
そこに手をかけたら・・・土門陵虐罪も追加なのです・・・

量刑は『懲役1000年地獄行き』に格上げだ。

「へあはあああ・・・・」
妙な声を上げる。それがこいつの笑い声だと分かった時、私の怒りはマックスに達した。

こんな・・・やつに!!

パンツが引き裂かれ、取り去られる。私の秘所が顕になった。
ソレの指が這い、私の陰裂に及ばんとする。

とうとう、睨みつけることもできなくなり、恐怖と嫌悪から目を逸らしたくて、ぎゅっと目をつむってしまう。

もう・・・ダメ!

思ったその瞬間、ぶううん!という低周波音のような音がソイツの後ろから響いた。
「がふぅ!」
どういうわけか、ソレが離れた気配がした。恐る恐る目を開けると、影が背後にのけぞり、膝から崩れていく様が見えた。

「その人に手を出すと、ろくなことにならないですよ」

崩れ落ちたソイツの後ろに見えたのは・・・

「宝生前さん・・・!」

そう、いつもの三つ揃えのスーツに身を包んだ、宝生前だった。

「すいません、土門様。少し、遅れました」
そう言って、宝生前は革靴でソレの頭を蹴りつけた。

多分、このときの私の目は、うるうるハート型になっていた、と思われる。
そう、私のヒーローが、現れてくれたのだ。
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