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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

自己紹介が終わったところで、日暮から本題が切り出された。今日から私達が始めるべきは、『まつろわぬ民』に攫われた片霧麻衣の捜索である、とのことだ。
「それについてはお任せください」
日暮が机の上に四角い布製の図版のようなものを広げた。ランチョンマットより少し大きなそれには真ん中に韓国国旗のあるような模様、いわゆる太極図が描かれており、その周囲を取り囲むように易者さんが使うような棒線でできた模様(易占いで用いる卦、というらしい)が描かれていた。
そして、彼女は革製の握りこぶし大の袋を取り出すと、そこに手を入れ、じゃラリと何かを取り出した。
「おお!日暮さんの占術を見られるとは・・・実に興味深い」
九条が声を上げる。なるほど、これからどこに行くか、占おうというわけか。占部の術者らしい考え方だ。
「んっん!お静かに!それと、九条さん、私のことは『ミスリン』とお呼びください!!」
ピシャリと、また日暮が言う。大事な儀式の最中に邪魔をしたと思ったのか、九条は大人しく引き下がった。
気を取り直すと、日暮は、袋から取り出した数個の石を手の内に握りしめ、それを握りこぶしごと額のあたりに持っていく。そのまま、朗々と呪言を奏上し始めた。
「夕占(ゆうげ)問い 石占もちて 占正となせ
ももづたふ いはれをつげよ その山神よ」
彼女の呪言に呼応するかのように、奇妙な音が日暮の手の内から響きだす。どうやら彼女が握りしめている石が微細に振動しているようだった。
「宣!」
結語とともに、掌中の石をばらりと布の図版の上に振りまく。石は色とりどりであり、どうやら翡翠や黒曜石、水晶などのようだった。それはいわゆる販売されている『宝石』のようにきちんとカットされているものではなく、自然石をそのまま削り出して使っている、という風情のものだった。
日暮の手から離れた後、余韻を残すように振動をしていた石たちも、数秒すると沈黙した。彼女は散らばった石を俯瞰するようにじっくりと眺めていた。どうやら、石の散らばり方とかから何かを読み取ろうとしているようだった。
「それについてはお任せください」
日暮が机の上に四角い布製の図版のようなものを広げた。ランチョンマットより少し大きなそれには真ん中に韓国国旗のあるような模様、いわゆる太極図が描かれており、その周囲を取り囲むように易者さんが使うような棒線でできた模様(易占いで用いる卦、というらしい)が描かれていた。
そして、彼女は革製の握りこぶし大の袋を取り出すと、そこに手を入れ、じゃラリと何かを取り出した。
「おお!日暮さんの占術を見られるとは・・・実に興味深い」
九条が声を上げる。なるほど、これからどこに行くか、占おうというわけか。占部の術者らしい考え方だ。
「んっん!お静かに!それと、九条さん、私のことは『ミスリン』とお呼びください!!」
ピシャリと、また日暮が言う。大事な儀式の最中に邪魔をしたと思ったのか、九条は大人しく引き下がった。
気を取り直すと、日暮は、袋から取り出した数個の石を手の内に握りしめ、それを握りこぶしごと額のあたりに持っていく。そのまま、朗々と呪言を奏上し始めた。
「夕占(ゆうげ)問い 石占もちて 占正となせ
ももづたふ いはれをつげよ その山神よ」
彼女の呪言に呼応するかのように、奇妙な音が日暮の手の内から響きだす。どうやら彼女が握りしめている石が微細に振動しているようだった。
「宣!」
結語とともに、掌中の石をばらりと布の図版の上に振りまく。石は色とりどりであり、どうやら翡翠や黒曜石、水晶などのようだった。それはいわゆる販売されている『宝石』のようにきちんとカットされているものではなく、自然石をそのまま削り出して使っている、という風情のものだった。
日暮の手から離れた後、余韻を残すように振動をしていた石たちも、数秒すると沈黙した。彼女は散らばった石を俯瞰するようにじっくりと眺めていた。どうやら、石の散らばり方とかから何かを読み取ろうとしているようだった。

