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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

「あれは石占じゃな・・・久しく見なかったが、まだやる者がいたとは」
ダリがボソリと言った。彼によると、石占とは石を用いた日本古来の占いのことで色んな方法があるという。その最もオーソドックスな方法は、石を投げて、それが落ちる場所や距離なんかで占うというものだそうだ。日暮の占術はそれと似ているが、よほど高等だ、とダリは言う。
しばらくじっと黙って、散らばった石を見つめていた日暮だったが、結論が出たようで、顔を上げると、私達に言った。
「若干気になるところはありますが、どうやら片霧麻衣さんの消息が掴めそうです。驚くことにまだ県内にいる、と思われます」
地図を取り出すと、日暮はそのある一点を指さした。こうして、私達は日暮が示した地点、石川県にある、とある山間の地を目指すことになったのだ。
日暮の指示で、私達はそれぞれの装備品を準備するために一旦解散をした。その間に御九里がレンタカーを借りてきてくれる手筈になっていた。
「なんで俺が!」
と文句を言うが、私はほぼペーパードライバーだし(あと、覚えている読者もいると思うが、大きな車両事故も起こしている身だ)、ダリは論外、日暮は運転免許すら持っていない。
九条は?
実際の所、彼は『僕の華麗な運転テクニックをぜひ披露いたしましょう』などと言って、やりたがったのだが、日暮がやんわりと止めたのだ。その様子を見ると、万能型の九条にも、できないことがあるらしいと知れた。
準備を終え、30分ほどたったころ、荷物を持ってホテルのロビーに私達が集まってきたところで、御九里がレンタルした車を回してくれた。
そして、いよいよ出発となった。
ここまで、わりと順調だと思えた。実は一番懸念されていたのは、麻衣の足取りがなかなか掴めない、ということだったのだが、日暮が優秀なためか、拍子抜けするほど早く目処が立ってしまった。後は居場所を正確に特定し、それを監視しつつ後日陰陽寮から送り込まれてくる救援/討伐部隊の本隊と合流して一気に確保すればいい。
まだまだ気は抜けないが、幸先はいい、と考えていいだろう。
走り出す車の窓の外をぼんやりと眺めながら、私はそんな事を考えていた。
ダリがボソリと言った。彼によると、石占とは石を用いた日本古来の占いのことで色んな方法があるという。その最もオーソドックスな方法は、石を投げて、それが落ちる場所や距離なんかで占うというものだそうだ。日暮の占術はそれと似ているが、よほど高等だ、とダリは言う。
しばらくじっと黙って、散らばった石を見つめていた日暮だったが、結論が出たようで、顔を上げると、私達に言った。
「若干気になるところはありますが、どうやら片霧麻衣さんの消息が掴めそうです。驚くことにまだ県内にいる、と思われます」
地図を取り出すと、日暮はそのある一点を指さした。こうして、私達は日暮が示した地点、石川県にある、とある山間の地を目指すことになったのだ。
日暮の指示で、私達はそれぞれの装備品を準備するために一旦解散をした。その間に御九里がレンタカーを借りてきてくれる手筈になっていた。
「なんで俺が!」
と文句を言うが、私はほぼペーパードライバーだし(あと、覚えている読者もいると思うが、大きな車両事故も起こしている身だ)、ダリは論外、日暮は運転免許すら持っていない。
九条は?
実際の所、彼は『僕の華麗な運転テクニックをぜひ披露いたしましょう』などと言って、やりたがったのだが、日暮がやんわりと止めたのだ。その様子を見ると、万能型の九条にも、できないことがあるらしいと知れた。
準備を終え、30分ほどたったころ、荷物を持ってホテルのロビーに私達が集まってきたところで、御九里がレンタルした車を回してくれた。
そして、いよいよ出発となった。
ここまで、わりと順調だと思えた。実は一番懸念されていたのは、麻衣の足取りがなかなか掴めない、ということだったのだが、日暮が優秀なためか、拍子抜けするほど早く目処が立ってしまった。後は居場所を正確に特定し、それを監視しつつ後日陰陽寮から送り込まれてくる救援/討伐部隊の本隊と合流して一気に確保すればいい。
まだまだ気は抜けないが、幸先はいい、と考えていいだろう。
走り出す車の窓の外をぼんやりと眺めながら、私はそんな事を考えていた。

