この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

☆☆☆
大きな鉄の塊が走り出し、地面近くの細かな砂利を排気ガスが巻き上げる。
建物から出てきた人間に気づかれないように植え込みの影に潜んでいたソレは、その鉄の塊が去ったと確信できるまで、じっと静かにしていた。ソレにとって、人から見えないところに潜伏するのはお手のものである。音が遠くに去ったのを見計らい、植え込みから少しだけ頭を出し、キョロキョロとあたりを伺った。そして、他の人間がいないのを確信すると、クリック音に似た鳴き声を上げた。
チッチッチッ・・・
それは、主への報告ができることについての喜びの声だった。ひげを動かし、周囲の気配を伺って、十分安全が確保されているとわかると、ぱっと植え込みから飛び出した。
チッチッチッ!
黒く小さなソレが街を走る。時折、自分を見た人間が叫び声を上げるが、そんなことはどうということもないことだった。とにかく走り、自分が見たものを愛する主人に伝えるのだ・・・その一心で街を走っていた。
そして、『ソレ』があまりに小さいことから、建物から出てきた人間達は、全くその存在に気づくことはなかったのである。
その存在も、それが知らせる情報がどのように使われてしまうのかも・・・である。
大きな鉄の塊が走り出し、地面近くの細かな砂利を排気ガスが巻き上げる。
建物から出てきた人間に気づかれないように植え込みの影に潜んでいたソレは、その鉄の塊が去ったと確信できるまで、じっと静かにしていた。ソレにとって、人から見えないところに潜伏するのはお手のものである。音が遠くに去ったのを見計らい、植え込みから少しだけ頭を出し、キョロキョロとあたりを伺った。そして、他の人間がいないのを確信すると、クリック音に似た鳴き声を上げた。
チッチッチッ・・・
それは、主への報告ができることについての喜びの声だった。ひげを動かし、周囲の気配を伺って、十分安全が確保されているとわかると、ぱっと植え込みから飛び出した。
チッチッチッ!
黒く小さなソレが街を走る。時折、自分を見た人間が叫び声を上げるが、そんなことはどうということもないことだった。とにかく走り、自分が見たものを愛する主人に伝えるのだ・・・その一心で街を走っていた。
そして、『ソレ』があまりに小さいことから、建物から出てきた人間達は、全くその存在に気づくことはなかったのである。
その存在も、それが知らせる情報がどのように使われてしまうのかも・・・である。

