この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

☆☆☆
車はあっけなく日暮が指定した場所にたどり着いた。そこは、金沢市から20キロほど離れた山間の村の端だった。
「多分、あの山の中に麻衣さんはいると思います」
日暮が目の前にある小高い山を指差す。大分特定はされたものの、山ひとつ分のどこか、では、やはり広すぎる。もう少し居場所を限定したいところだ。ただ、日暮の占いでは、ここまでの範囲を特定するのが精一杯だそうだ。ここからは周囲の人に聞き込みをしたり、歩いて探すしかないということだった。
「いや、大丈夫です!ここからは僕がっ!」
その時、九条が名乗りを上げた。彼はバックから数枚の札を取り出す。その札には『鬼』という文字と格子模様、その下に『艮歳刑勧請』とあった。そして、それをおもむろに中空に放り投げ、呪言を唱える。
『五行天帝 歳刑 八将荒魂勧請』
その言葉に反応し、中空に投げられた札が白く光ったかと思うと、それぞれが鳩のような鳥に変化し羽ばたき始めた。いつだったか土御門が見せた『式神』というのと同じやつだろう。九条の式神は白色の鳥だった。
10羽ほどの白い鳥たちが、バサバサと羽音を立てながら私達の周囲を飛び交う。九条が手印を結び、それらに命じた。
「行け・・・僕の、白鷺姫(しらさぎひめ)」
声とともに、一斉に白い光をまとった式神・白鷺姫が飛び立っていく。
「あとは白鷺姫が目標物を見つけてくれるでしょう。お任せください。僕の式神達は探し物が得意なんです」
空に飛び立つ白鷺たちを見送りながら九条が言ったとき、『けっ!キザったらしい式神だ・・・』とボソリと吐き捨てるような御九里の声が聞こえた気がした。
結論から言うと、私達の探索は思いのほか早く終結した。というのも、九条の言う通り、彼の放った『探し物が得意な』式神が、麻衣の行方を、あっという間に特定してしまったからである。
ここで、日暮が一旦本部に連絡を入れた。本部の方ではまだ急襲部隊の準備が整っていないようだった。本部としてもここまで早く私達、先遣隊が麻衣の居場所を突き止めるということは想定外だったようだ。
車はあっけなく日暮が指定した場所にたどり着いた。そこは、金沢市から20キロほど離れた山間の村の端だった。
「多分、あの山の中に麻衣さんはいると思います」
日暮が目の前にある小高い山を指差す。大分特定はされたものの、山ひとつ分のどこか、では、やはり広すぎる。もう少し居場所を限定したいところだ。ただ、日暮の占いでは、ここまでの範囲を特定するのが精一杯だそうだ。ここからは周囲の人に聞き込みをしたり、歩いて探すしかないということだった。
「いや、大丈夫です!ここからは僕がっ!」
その時、九条が名乗りを上げた。彼はバックから数枚の札を取り出す。その札には『鬼』という文字と格子模様、その下に『艮歳刑勧請』とあった。そして、それをおもむろに中空に放り投げ、呪言を唱える。
『五行天帝 歳刑 八将荒魂勧請』
その言葉に反応し、中空に投げられた札が白く光ったかと思うと、それぞれが鳩のような鳥に変化し羽ばたき始めた。いつだったか土御門が見せた『式神』というのと同じやつだろう。九条の式神は白色の鳥だった。
10羽ほどの白い鳥たちが、バサバサと羽音を立てながら私達の周囲を飛び交う。九条が手印を結び、それらに命じた。
「行け・・・僕の、白鷺姫(しらさぎひめ)」
声とともに、一斉に白い光をまとった式神・白鷺姫が飛び立っていく。
「あとは白鷺姫が目標物を見つけてくれるでしょう。お任せください。僕の式神達は探し物が得意なんです」
空に飛び立つ白鷺たちを見送りながら九条が言ったとき、『けっ!キザったらしい式神だ・・・』とボソリと吐き捨てるような御九里の声が聞こえた気がした。
結論から言うと、私達の探索は思いのほか早く終結した。というのも、九条の言う通り、彼の放った『探し物が得意な』式神が、麻衣の行方を、あっという間に特定してしまったからである。
ここで、日暮が一旦本部に連絡を入れた。本部の方ではまだ急襲部隊の準備が整っていないようだった。本部としてもここまで早く私達、先遣隊が麻衣の居場所を突き止めるということは想定外だったようだ。

