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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

「僕らが優秀すぎたってことですね」
フッと九条が前髪をかき上げる。
「本部は麻衣さんたちを捕捉しつつ待機するように言っています」
まあ、そうだろう。敵は神宝使いだ。それに、もしかしたら二人だけではないかもしれない。ホシガリ様や疱瘡神のような未知の存在が一緒である可能性も否めないのだ。
ここは本隊との合流を待ち、慎重に事を運ぶべきだろう。
九条によると、麻衣の近くには二人の術者と思しき人物がいるという。それは風貌からして児童養護施設を襲った者たちに違いないとのことだった。彼らが潜伏しているのは山の中腹辺りにある廃寺だという。しかし、児童養護施設を襲撃してから今日までで5日も経過しているというのに、未だにそんなところでグズグズしているのはなぜなのかと思う。もしかしたら何かを待っている・・・とかなのだろうか?
疑問は尽きないものの、私達がやるべきことは彼らの位置を補足し続けることである。というわけで、日暮の提案で、このあたりの村で宿泊できる場所か、待機できる場所を探そうということになる。『場合によっては石川県警を経由して捜査協力という形で民間の方のお宅にお邪魔する必要があるかもしれませんね』とのことだった。
ところが、日暮がスマホで再び本部に連絡しようとしたのを『お静かに!』と九条が制した。その眼差しに緊張感が走る。彼は、山の方を見て目を眇めた。
「日暮さ・・・いや、ミスリン。駄目です・・・連中が動き始めました。」
その言葉に一同が息を呑む。どういうわけか、敵が移動を始めてしまったようだ。九条が言うにはこちらに気付いた、というわけではない様子だということだ。だとしたら、たまたま今夜出発する予定だった、という可能性もある。
報告を受けた日暮の判断は早かった。『すぐ追撃体制を取りましょう』と宣言したのだ。
彼女曰く、これまでの『まつろわぬ民』の行動からすると、彼らは『鬼道』を使った長距離移動手段を自在に操れる可能性が高い。彼らが動いた理由は不明だとしても、ここで逃がしたらせっかく見つけた手がかりをみすみす逃すことになる。それを防ぐためには、戦闘も辞さない覚悟で、迅速な行動が不可欠だとのことだった。
フッと九条が前髪をかき上げる。
「本部は麻衣さんたちを捕捉しつつ待機するように言っています」
まあ、そうだろう。敵は神宝使いだ。それに、もしかしたら二人だけではないかもしれない。ホシガリ様や疱瘡神のような未知の存在が一緒である可能性も否めないのだ。
ここは本隊との合流を待ち、慎重に事を運ぶべきだろう。
九条によると、麻衣の近くには二人の術者と思しき人物がいるという。それは風貌からして児童養護施設を襲った者たちに違いないとのことだった。彼らが潜伏しているのは山の中腹辺りにある廃寺だという。しかし、児童養護施設を襲撃してから今日までで5日も経過しているというのに、未だにそんなところでグズグズしているのはなぜなのかと思う。もしかしたら何かを待っている・・・とかなのだろうか?
疑問は尽きないものの、私達がやるべきことは彼らの位置を補足し続けることである。というわけで、日暮の提案で、このあたりの村で宿泊できる場所か、待機できる場所を探そうということになる。『場合によっては石川県警を経由して捜査協力という形で民間の方のお宅にお邪魔する必要があるかもしれませんね』とのことだった。
ところが、日暮がスマホで再び本部に連絡しようとしたのを『お静かに!』と九条が制した。その眼差しに緊張感が走る。彼は、山の方を見て目を眇めた。
「日暮さ・・・いや、ミスリン。駄目です・・・連中が動き始めました。」
その言葉に一同が息を呑む。どういうわけか、敵が移動を始めてしまったようだ。九条が言うにはこちらに気付いた、というわけではない様子だということだ。だとしたら、たまたま今夜出発する予定だった、という可能性もある。
報告を受けた日暮の判断は早かった。『すぐ追撃体制を取りましょう』と宣言したのだ。
彼女曰く、これまでの『まつろわぬ民』の行動からすると、彼らは『鬼道』を使った長距離移動手段を自在に操れる可能性が高い。彼らが動いた理由は不明だとしても、ここで逃がしたらせっかく見つけた手がかりをみすみす逃すことになる。それを防ぐためには、戦闘も辞さない覚悟で、迅速な行動が不可欠だとのことだった。

