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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

そして、広場の奥、御九里と日暮はその衣服が破れたり煤けたりしている様子が見て取れるものの、普通に立っている。
「ああ!びっくりした〜!!九条さん!おかげで助かりました!」
そう言った日暮の肩に乗っていたはずの白鷺姫がいなくなっている。もしかしたら九条の式神『白鷺姫』がどうにかして彼女たちを守ったのかもしれない。
「なんでぇ、クチナワ。全員ピンピンしてんじゃねえかよっ!」
野太い声が頭上から聞こえた。その声とともに、ドシン、と広場の中央に浅黒い肌の大男が飛び降りてきた。その男が地面に落ちた瞬間、少し揺れたような気がする。まるで鉄球でも落ちてきたかのようだった。
その大男が、ぬうっとしゃがんだ姿勢から立ち上がる。身の丈は2メートルはあろうかという巨体であり、腕は誇張抜きに私の太ももよりも太い。全身マッチョの様子は、大男というよりは『筋肉ダルマ』とでも呼んだ方がぴったりだ。
「クチナワ・・・そっちの細かいのは任せた。俺はあの強そうな狐を殺る」
「ああ、カダマシ・・・こっちはこっちで派手に行くからな。死ぬなよ。」
クチナワと呼ばれたのは、頭上の木の上にいる、白ワイシャツに薄青色の肩布をかけたひょろっと背の高い男だった。そいつが両手を広げると、その手の先から丸っこい毛玉のようなものがいくつもいくつもポロポロと湧き出し、落ちてきた。
「ちっ!」
九条はそれを見ると、慌てたように立ち上がり、頭上の男から距離を取る。その時も、右手で左腕を押さえているところを見ると、左半身の傷は相当悪いようだ。
「綾音さん!もっと下がってください!あれがさっき爆発したやつの正体です!」
毛玉は地面に落ち、二度、三度弾んだかと思うと手足がにゅっと出てきて、そのあたりを走り回る。その姿は少し丸っこすぎるが、ネズミのようなフォルムをしていた。
「御九里!気をつけろ、上のやつは小玉鼠を使う!」
「うるせえ、九条!それくらい、俺も気づいてたわい!」
御九里が背中の大太刀を抜く。それは土御門が使っていた将軍剣と違い、反りが入っている、いわゆる通常私達が日本刀と呼ぶものだった。
「九条!ネズミは任せたぞ!俺は上のヤツを殺る」
「ああ!びっくりした〜!!九条さん!おかげで助かりました!」
そう言った日暮の肩に乗っていたはずの白鷺姫がいなくなっている。もしかしたら九条の式神『白鷺姫』がどうにかして彼女たちを守ったのかもしれない。
「なんでぇ、クチナワ。全員ピンピンしてんじゃねえかよっ!」
野太い声が頭上から聞こえた。その声とともに、ドシン、と広場の中央に浅黒い肌の大男が飛び降りてきた。その男が地面に落ちた瞬間、少し揺れたような気がする。まるで鉄球でも落ちてきたかのようだった。
その大男が、ぬうっとしゃがんだ姿勢から立ち上がる。身の丈は2メートルはあろうかという巨体であり、腕は誇張抜きに私の太ももよりも太い。全身マッチョの様子は、大男というよりは『筋肉ダルマ』とでも呼んだ方がぴったりだ。
「クチナワ・・・そっちの細かいのは任せた。俺はあの強そうな狐を殺る」
「ああ、カダマシ・・・こっちはこっちで派手に行くからな。死ぬなよ。」
クチナワと呼ばれたのは、頭上の木の上にいる、白ワイシャツに薄青色の肩布をかけたひょろっと背の高い男だった。そいつが両手を広げると、その手の先から丸っこい毛玉のようなものがいくつもいくつもポロポロと湧き出し、落ちてきた。
「ちっ!」
九条はそれを見ると、慌てたように立ち上がり、頭上の男から距離を取る。その時も、右手で左腕を押さえているところを見ると、左半身の傷は相当悪いようだ。
「綾音さん!もっと下がってください!あれがさっき爆発したやつの正体です!」
毛玉は地面に落ち、二度、三度弾んだかと思うと手足がにゅっと出てきて、そのあたりを走り回る。その姿は少し丸っこすぎるが、ネズミのようなフォルムをしていた。
「御九里!気をつけろ、上のやつは小玉鼠を使う!」
「うるせえ、九条!それくらい、俺も気づいてたわい!」
御九里が背中の大太刀を抜く。それは土御門が使っていた将軍剣と違い、反りが入っている、いわゆる通常私達が日本刀と呼ぶものだった。
「九条!ネズミは任せたぞ!俺は上のヤツを殺る」

