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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

言うや、御九里は大太刀を背中に担ぐように構えると、両足をぐっと曲げた。まさかあの木の上まで飛び上がる気!?
クチナワと呼ばれた男が立っている枝までは、優に7〜8メートル以上はある。あんなところまで飛び上がれるわけがない!
そんな中、広場のあちこちをチョロチョロと何匹もの小玉鼠が走り回っている。あれひとつひとつがさっきの規模の爆発を起こすと考えると、とんでもないことだ。
「綾音さん、こっちこっち!」
後ろから声がする。ふと振り向くと、いつの間に私の背後に回ったのか、日暮が藪の中から手招きをしている。どうやら彼女はものすごく逃げ足が早いようだ。
「戦闘は、御九里たちに任せましょう。私達は麻衣さんの救出を優先しましょう」
なんとなくもっともらしいことを言っているが、その目や態度が、如実に恐怖の色をたたえているところを見ると、日暮は一刻も早くこの戦場から逃れたいようだった。ただ、麻衣の居場所が分かっているのは間違いないようだ。彼女が言うには、麻衣は、広場の右手奥、山側の森の中にいる、とのことだった。
「彼らは大丈夫です。強いですから。他に敵の気配はないです。こちらから広場を大きく迂回して、麻衣さんを助けましょう!」
そう言いながら、森の中を進んでいく。
みんな・・・負けないで・・・。
一瞬、広場の方を伺い、そう念じると、私も日暮の後に続いていった。
クチナワと呼ばれた男が立っている枝までは、優に7〜8メートル以上はある。あんなところまで飛び上がれるわけがない!
そんな中、広場のあちこちをチョロチョロと何匹もの小玉鼠が走り回っている。あれひとつひとつがさっきの規模の爆発を起こすと考えると、とんでもないことだ。
「綾音さん、こっちこっち!」
後ろから声がする。ふと振り向くと、いつの間に私の背後に回ったのか、日暮が藪の中から手招きをしている。どうやら彼女はものすごく逃げ足が早いようだ。
「戦闘は、御九里たちに任せましょう。私達は麻衣さんの救出を優先しましょう」
なんとなくもっともらしいことを言っているが、その目や態度が、如実に恐怖の色をたたえているところを見ると、日暮は一刻も早くこの戦場から逃れたいようだった。ただ、麻衣の居場所が分かっているのは間違いないようだ。彼女が言うには、麻衣は、広場の右手奥、山側の森の中にいる、とのことだった。
「彼らは大丈夫です。強いですから。他に敵の気配はないです。こちらから広場を大きく迂回して、麻衣さんを助けましょう!」
そう言いながら、森の中を進んでいく。
みんな・・・負けないで・・・。
一瞬、広場の方を伺い、そう念じると、私も日暮の後に続いていった。

