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天狐あやかし秘譚
第7章 【第3話 狐狸の戦い】迷者不問(めいしゃふもん)
「おい、主(あるじ)よ・・・」
ダリがおもむろに口を開く。いや、この人、主(あるじ)じゃないと思うけど・・・。
「ここのは、本当に食えるのか?」
ちょ・・・何てこと聞くのよ!
そうか、ダリってば外食初めて?それで、警戒してそんなことを!!
「あ・・・いや、ほんと、すいません。だ・・・ダリ!大丈夫よ、ちゃんと食べられるから!」
「もっちろんでーす!」
よかった、ウェイターのお姉さん、気にしてないみたい。なんか合わせてくれたし・・・。
私は『本当にごめんなさい』と心の中で手を合わせる。こう見えて変な人じゃないんです。いや、そもそも人じゃないか・・・。

もう!変なこと言わないでよ!

浅葱の女性が襖の向こうに消える。ほっと息をついた。
「わー!ひろーい」
物珍しいのか、清香ちゃんがバタバタと走り回る。ダリは出されたお茶をしげしげと眺め、ちょっと匂いを嗅いだかと思うと、なにかに納得したかのように、飲み始めた。

「うん・・・飲めるようだ」

どんだけ疑ってるのよ・・・。現代社会に慣れていないからかな?

あ・・・そうだ・・・ちょっと・・・。私は「ちょっと失礼」と立ち上がる。
「ん?どうした?綾音、大丈夫か?」
目ざとくダリが声をかけてくる。ええい!乙女心のわからんやつ。
「えっと・・・ちょっと、お花摘みに」
そう、私は若干催していたのだ。トイレに行きたい、言わせるな!
「え!?おはな?清香も!!」

あああああ・・・清香ちゃんがいらぬ誤解を。
「いや、違って・・・あの、ままね、トイレに行きたくって」
「なーんだ!いってらっしゃーい」
「本当に、大丈夫なのか?」
いや、トイレ行くだけだし・・・。まったく・・・結局バッチリ全部言う羽目になったよ・・・。ダリってば、こういう時、気がきかないのよね!
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