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天狐あやかし秘譚
第7章 【第3話 狐狸の戦い】迷者不問(めいしゃふもん)

若干、乙女心を踏みにじられた感があるまま私は襖を開く。右を見ても、左を見ても、長い廊下が続いている。本当に広いな・・・このお店。とりあえず、店員さんを探して、トイレの場所を聞かなくちゃ・・・。
古い日本家屋をイメージした店なのだろう、左右に等間隔に襖が並び、それぞれの襖の上に部屋の名前が木の札に書かれている。
今、私が出てきた部屋には『桔梗』とあった。対面にあるのは『藤』。どうやら花の名前がついているようだ。
ええっと、確か、こっちから着たよね。玄関の方に行ってみよう。ちょっと歩くと、右に分かれ道があるところに出た。
ぱたぱたぱた・・・
右の方から足音がする。あ、店員さん?
右の道に入ると、すぐにT字路になっているので、そこまで行き、右左を見る。右の方、少し先にお膳をふたつ重ねで持っている店員さんの後ろ姿が見えた。今度の女性は黄色っぽい色(刈安色とかいうのかな?)の着物を着ている。
「あの!」
声をかける。しかし、聞こえなかったのか、パタパタと歩いて行ってしまう。
「ま・・・まって!!」
こんなに広いお店、店員さんに聞かなくちゃトイレの場所わかんないよ!しかし、私の声が聞こえないのか、店員さんはどんどん歩いて行ってしまう。小走りで夢中で追いかける。刈安の着物の女性は、何度も右に左に通路を曲がる。その度に私は「すいませーん」と声をかけるが、一向に止まってくれない。
ほんと、ちょっと、待って!
いつしか、私はほとんど全力疾走に近いほどの速度で走っていた。
でも・・・
追いつけない。
な・・・なんて高速な・・・。
私としては一生懸命追いかけたつもりなのに、いつまで経っても、どんなに足を早めても、刈安の着物の女性に追いつけない。差が広まることもないが、縮むこともない。
ついに、私は足を止めてしまう。ぜーぜーはーはー、肩で息をする。つ・・・つらい。息切れた・・・。
ふと顔をあげると、既に刈安の女性はいなくなっていた。
古い日本家屋をイメージした店なのだろう、左右に等間隔に襖が並び、それぞれの襖の上に部屋の名前が木の札に書かれている。
今、私が出てきた部屋には『桔梗』とあった。対面にあるのは『藤』。どうやら花の名前がついているようだ。
ええっと、確か、こっちから着たよね。玄関の方に行ってみよう。ちょっと歩くと、右に分かれ道があるところに出た。
ぱたぱたぱた・・・
右の方から足音がする。あ、店員さん?
右の道に入ると、すぐにT字路になっているので、そこまで行き、右左を見る。右の方、少し先にお膳をふたつ重ねで持っている店員さんの後ろ姿が見えた。今度の女性は黄色っぽい色(刈安色とかいうのかな?)の着物を着ている。
「あの!」
声をかける。しかし、聞こえなかったのか、パタパタと歩いて行ってしまう。
「ま・・・まって!!」
こんなに広いお店、店員さんに聞かなくちゃトイレの場所わかんないよ!しかし、私の声が聞こえないのか、店員さんはどんどん歩いて行ってしまう。小走りで夢中で追いかける。刈安の着物の女性は、何度も右に左に通路を曲がる。その度に私は「すいませーん」と声をかけるが、一向に止まってくれない。
ほんと、ちょっと、待って!
いつしか、私はほとんど全力疾走に近いほどの速度で走っていた。
でも・・・
追いつけない。
な・・・なんて高速な・・・。
私としては一生懸命追いかけたつもりなのに、いつまで経っても、どんなに足を早めても、刈安の着物の女性に追いつけない。差が広まることもないが、縮むこともない。
ついに、私は足を止めてしまう。ぜーぜーはーはー、肩で息をする。つ・・・つらい。息切れた・・・。
ふと顔をあげると、既に刈安の女性はいなくなっていた。

