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ちょっと待って!溺愛されるなんて聞いてないです!?
第1章 転生したら悪役令嬢でした。

「···、な、なな、何コレ···」

起きてすぐの発声がこれだった。
だっておかしいのだ。
私は確か、会社から帰宅途中に横断歩道を渡っていたら信号無視したトラックに突撃されて死んだと思ったのに、やたら豪華なだだっ広い部屋でやたら豪華な天蓋付きベッドの上で身を起こし、直ぐに目に入った自分の容姿が転生レベルで変わっている事に、ガラス窓に写った姿を見て驚愕した。

なんなら声だって違う。
鈴を転がしたような澄んだ綺麗な声。
髪はピンクで目の色は青。容姿はふんわりとした庇護欲をそそられるような顔立ちに、唇は小さめで血色の良い赤色だ。

え、え···。
私、本当に転生しちゃったの···?
手を動かして見れば同じように動く、私の姿を反射した窓ガラス。髪を引っ張れば痛いし、ほっぺたをつねれば痛い。てか、この顔どっかで見た事あるんだよなー。何だっけ?小説?同人?乙女ゲーム?

うーん、と唸っていると控えめなノック音が部屋に響いた。
え、嘘。誰か来る。この人の記憶が無いと言うのに今部屋に入って来られた非常にマズイ!!かなりヤバい!!どうすれば、ここはひとまず···ええい、寝たフリだ!!

「お嬢様、失礼いたします」

ガチャっと音が鳴り、コツコツと私が寝たフリをするベッドの近場へ足音が近づいて来る。きっとメイドさんか何かだろうその人に、部屋から出て行ってもらうまではひたすらに寝たフリをして過ごそう。と寝たフリ作戦を決め込んだ私グッジョブ!

「クリス殿下、どうぞこちらへ···」
「あぁ、ご苦労」

···、殿下?今、殿下って言った?何、この子殿下と婚約者な訳!?
そう物事は上手くいくはずもなく、私の部屋へと通された殿下はベッドの隣の椅子に腰掛けたようだった。

ガチャっと部屋のドアが閉まる音がした事から、私は殿下と2人きりにされたと思われる···いや、ちょ、メイドさん?いくら婚約者と言えど異性2人きりしかも私は寝ている女の子(?)なのに、2人きりにさせるのは如何なものですかね?私、背中の冷や汗が止まらないのよ。

ジッと見つめられるような視線が、ジリジリと痛い。
これは目をあけた方がいいのだろうか?でも目をあけた所で、殿下と何を話せばいいの?この子の記憶カムバック!!



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