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ちょっと待って!溺愛されるなんて聞いてないです!?
第1章 転生したら悪役令嬢でした。

もしかして、クリス殿下は本当にミリアの事を愛している?でなきゃあんなに怒らないし、愛する人を失う怖さから震えもしないよね?こんなに強く抱き締められて、ミリアは本望だと思う。そっかぁ···愛されてるんだ···って、あれ?今、ミリアは私だ。となるとヒロインはどうなるの?てか、コレ何ルートよ。

「クリス殿下···」
「クリスだ」
「···、クリス様」
「クリス」

とりあえずクリス殿下が落ち着くまでこのままでいようと思ったけれど、ダメだ、私のしんぞが持ちそうにないので、ぎゅっと抱き締めて背中をぽんぽんとあやすようにクリス殿下の名を呼べば、頑なに呼び捨てにしろと子供じみた声を出していた。

「···クリス。ごめんなさい、ご心配おかけしました」
「ミリィ···、本当に良かった。キミに何も無くて」

「クリス」と名前を、呼べばふわりと体を解放されて、私はクリス殿下を見つめた。クリス殿下を、見れば胸を撫で下ろしたような安心した表情を浮かべていた。そっと近づいて来た殿下の顔に、私は狼狽えたままチュッ、と軽く唇を重ねられた瞬間···。

「クリス殿下、お時間です。本日の面会時間はとうに過ぎておりますゆえ、お引き取りくださいませ」
「···マリア」

ノック音の後に開けられた扉から、先程まで私に付いていてくれたメイドのマリアが遠慮無く部屋へと侵入を果たした。ちなみにクリス殿下とマリアは親戚にあたり、マリアは私の専属の筆頭侍女である。マリアはマリアで良いところのお嬢様のはずなのに、何故かこうして私に仕えてくれているのである。

ちなみに邪魔をされたクリス殿下はと言えば、怒りは表に出さないものの···。

「クリス殿下、またお会いに来てくださいますか?今度はわたくしの体調が万全な時に」
「いや、万全な時とは限らなくとも、必ず会いに来るよ」
「承知致しました。楽しみにしておりますわ」

私がそう伝えれば、流れる動作で私の手の指先をそっと掴んで、そこへクリス殿下が唇を落とした。もう、脳内がパニック状態であるのは言わずもがな。

「ふふ、私の可愛いミリィ、また今度」
「え、えぇ···また、今度」

アメジストの瞳を細めて、殿下は私の部屋を後にした。

推しが!推しがかっこよすぎて辛い!!
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