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ちょっと待って!溺愛されるなんて聞いてないです!?
第1章 転生したら悪役令嬢でした。
綺麗な人に睨まれると怖いと思うのは、男も女も一緒よねぇ。と、どこか他人事に考えている時だった。クリス殿下は膝の上でグッと握っていた両の手を解いて椅子から立ち上がり、今度は私のそっと両手で顔を包み込み、自分の方へと私の顔を向かせたクリス殿下。必然的にアメジストの目が私を真っ直ぐに射抜いていて、私は驚きと動揺と緊張で体を固くした。
「ミリィ···君は、···君が階段から落ちたと聞いた時、私は心臓が止まると思ったんだぞ!私がどれだけ心配したと思っているんだ···」
「···は、···はひっ··!?」
ん?ん?ん?こんな展開あったっけ?そもそもコレは私の言い方が悪かったが為に引き起こした事故なんじゃ?私の記憶の中の穏やかなクリス殿下は、珍しくも激情を露にしていた。クリス殿下も怒る事あるんだ···。にしても、顔がやけに近い近い近過ぎる!距離も近いよ。いくら婚約者(?)と言えど私はネグリジェなんですが!正装のカッチリ軍服姿の殿下と違って、私は薄着なんですが!
「も、申し訳ございません!···殿下、あ、あの、私今···薄着で···そのっ」
下手したら胸元が開いているから殿下からは丸見えなわけで。私は謝罪しつつもクリス殿下の手のひらに自分の手を重ねて離すように促すけれども、恥ずかしさから顔に熱が集まって頭の中が些かパニック状態になっていた。こんな時にとは思うが、推しが目の前にいてそんな表情された挙句にほっぺた触られたのよ?よくも顔が爆発しなかったなとは思うわ!
「いいや、わかっていないだろう。ミリィ···」
「えっ、待ってくださいクリス殿下」
「···ミリィ、私はね、キミの全てが大切なんだよ···あんな無茶な事をして、キミ自身に何かあったらどうするんだ。私が魔法で応急処置をしていなかったら今頃···それに、何処か痕が残る傷が出来ていたかもしれない。ミリィ、キミが最近他人優先していた事は知っているが、キミは公爵令嬢で、···私の婚約者なんだぞ!」
「···、で、殿下!?」
「クリス···、2人きりの時はクリスと呼べと、命じたはずだ」
ちょっと待って!クリス殿下、ミリアの事毛嫌いしていなかったか?ちょっと待ってこれどう言う状況!?ギュッと背中に回された腕に入ったクリス殿下の腕が、微かに震えていたのだと知る。