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人外に愛される【短編集】
第2章 カ タ バミ 様
この小さい村では、昔から【神隠し】の言い伝えがあった。

【カタバミ】様は夜に出歩く子供を攫って1つになる。

実際に何十年に一回は、行方不明の子供が出ている。






しかし、【カタバミ】様が降りてくる禁忌の森は整備がされていなく、不用意に入っては大人でも遭難しそうな程深い。

近隣の市町村は、ただの遭難だと思っている。

そのに住む村人達だけが、【カタバミ】様を信じていた。






何故なら。

【カタバミ】様は夜になると、村を徘徊しているからだ。
























この田舎の村では、夜に車の音や電車の音はしない。

だからよく聞こえるのだ。

村を徘徊する【カタバミ】様の声が。








『…か…ぇロゥ……。』

『1…っニな……ル…。』







今日も風の音と共に、【カタバミ】様の声が聞こえる。

鈴は布団を被りながらその声が聞こえない様に耳を覆った。






おかしな事に、この事を大人に言っても誰も聞こえないと言う。

大人達は、子供を寝かしつける為に【夜になると【カタバミ】様が現れる】と脅したりもする。






何故だろう。

みんな大人になれば忘れてしまうのだろうか。

この【カタバミ】様の気持ちの悪い声を。








鈴は村にある中学生の1人だ。

中学生は小学校と校舎が一緒で、村の中学生は5人しかいない。

高校生になると、村の外にある寮付きの高校に行くのが普通だった。






「鈴。」

コンコンと窓を叩かれて、鈴はすぐに窓を開けた。

「涼ちゃん。」







高校の制服を着た涼介が、薄暗い外に立っている。

涼介はこの村では珍しく、ここから高校に通っている。

その為、朝早くて、帰りはいつもこんなに遅い。

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