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人外に愛される【短編集】
第2章 カ タ バミ 様
「涼ちゃん、お帰りなさい。もう20時過ぎちゃったから、早く帰らないと。」

鈴は窓から顔を出して涼介の顔を見上げた。







涼介は、鈴の2個年上の男の子だ。

小さなこの村では、周りの子供はみんな幼馴染だ。

だけど、涼介は鈴にとって少し違う。







小さな頃は同じ位だった身長は、いつの間にか見上げるほどになっていた。

元々綺麗な顔をしていた男の子は、鈴とは違ってもう端正な大人の表情を鈴に向ける。






「もう帰るよ。その前に鈴の顔が見たかったんだ。」

涼介はポンッと鈴の頭に手を置いた。

鈴の頭を片手で掴める様な、そんな大きな手だった。







その高い身長を活かして、高校ではバレー部に入った様だ。

だから余計に村に帰って来る時間が遅い。







中学の時に見た、ジャージ姿では無く、高校のジャージを着ている涼介がなんだかくすぐったい。






鈴は涼介が好きだった。






涼介は、鈴の気持ちを知っている様で、実際は分からない。

こうして毎日会いに来てくれるのだって好意なのか…。

確かめにはまだ気持ちの整理が付いていなかった。







涼介は顔を見せる程度で、鈴が家に居るのを確認するとすぐに自分の家に帰る。

『また明日。』

そう言って家に帰っていく涼介をずっと見送っていたいが。

【カタバミ】様が怖くて、鈴はすぐに窓を閉める。








(涼ちゃんが居るから、夜も我慢出来る。)








怖い時は涼介を思い出す。

涼介なら、【カタバミ】様からも自分を守ってくれるだろう。








鈴にとって涼介は、物語に出てくる王子様の様だった。



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