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人外に愛される【短編集】
第2章 カ タ バミ 様
「やだっ……涼ちゃん……怖い!」

『怖がらないで…鈴……。』








ぎゅっと鈴を抱く涼介の声は、もう【カタバミ】様だった。

その背後から、ずっと扉を引っ掻く音も続いている。








訳が分からなかった。

「涼ちゃん…涼ちゃん……。」

何度呼んで見ても、鈴を見下ろす涼介の目は赤いままだった。







『……ああ……鈴……。』

涼介は鈴の頭を掴んで、自分の胸に押し込んだ。

鈴は現状が理解出来なくて、ただ涼介に抱きしめられるしか出来ない。








鈴を抱きながら、涼介は何度も自分の顔を鈴の頭に擦り付ける。

『やっと、鈴と1つになれる。』

愛おしそうにそう言うと、涼介は鈴の顔を胸から離して、現れた唇にキスをした。








「??!!」

すぐに涼介の舌が鈴の口の中に入ってきて、生暖かい舌が鈴の口内を舐め回している。

「っ!やだ!涼ちゃん、なんで?!」








涼介とのキスを心焦がれていなかった訳ではない。

だけれども、鈴が望んでいた様な涼介のキスでは無い。








涼介を引き離そうと、彼の頬に触れた時に、目から流れている血に触れた。

どんなに涼介にキスをされていても、涼介の様に恍惚な顔をする事なんて出来ない。







「ん……っふぁっ……。」

少しの隙間から、一生懸命に息を吸う。

ポタポタと、鈴の服の上に涼介の目から流れる血が落ちている。








「涼ちゃんっ!血がっ!!」

目の前にいるのは涼介なのか。

確証は持てないけど、涼介の姿で血を流しているその姿に、鈴は胸が痛かった。







『ああ、鈴の服が汚れちゃったね。』

涼介はそう言うと、鈴の前ボタンに手をかけた。

「やだ!!涼ちゃん!!」

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