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許される条件
第11章 誘い

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「やっぱり、モデルさんだったんですね?」
落ち着いた店は、ビルの谷間にあるバーだった。

彼女は常連らしく、バーテンダーは黙って頷くとカウンターの隅の席を勧めた。
高鳴る胸の鼓動を押さえて僕はさっきの質問をしたのだった。

「へへっー・・こんなのに出てるのぉ・・・」
スマホの画面に彼女が映っている。

有名なアパレルブランドのサイトだ。
僕は改めて目の前の美女を見つめた。

こんな素敵な女性が僕をタイプだなんて。
きっと、からかわれているのだろう。

そんな僕の気持ちを見透かしたのか、彼女は微笑みながら呟いた。

「ちょっと、疲れちゃったんだ・・・」
「えっ・・・?」

「アタシの廻りってぇ・・・」
グラスを掴む僕の手を指先でなぞる。

「ヒロシみたいなチャライのばっかしだし・・・」
「ふ、二人は付き合っているの?」

くすぐったさに声が震える。

「まさか?遊びよぉ・・・」
「へ、へぇー・・・」

意味深な視線に僕の心臓は爆発しそうだ。

彼女は余裕の表情でグラスを口に含む。
濡れた唇が妖しい光を放っている。

「ねっ・・エッチ、しようか?」
「ブッ・・・」

大胆な言葉に、思わず飲みかけのカクテルを吐き出してしまった。

「ふふっ・・可愛い・・・」
クスクス笑う彼女に翻弄され続けていく。

「だってぇ・・・
私に気があるから、メールくれたんでしょう?」

その通りだった。

あの日。
喫茶店で話した後、別れ際に手を握られた。

僕は絵美に見られたかドキドキしたが、気づかなかったようだ。
手の中のメモには電話番号が書いてあった。

家に帰った後。
絵美が入浴している時に電話をかけてみた。

「もしかして、優君・・・?」
弾む声が耳元で響くと、僕の胸は破裂しそうに高なった。

「嬉しいっ・・番号、登録しちゃうね?」
「あ、あのぉ・・は、はい・・・」

とりとめのない話をして、すぐに電話を切った。
多分、からかわれているに違いないとは思ったし、絵美が風呂から戻るかもしれないから。

そして、数日後の今日の昼休みに。
彼女から誘いがあったのだ。

やはり、からかわれていたのだと。
忘れかけていた時のことだった。
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