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展翅室
第1章 展翅室

「私はどちらかというと、谷崎は初期の「少年」なんかが好みでございます」
カウンターに座った一人の男が、マスターのシラサキと話をしている。
「ふふふ、そうですか。あれはSMですからね、本格的な」
まだ時間が早いせいか、バーに客は一人しかいない。その二人の会話を、萌子は少し離れた場所から聞いていた。全裸の大の字ポーズで固定されて……。
そう、結局次の日、萌子は会員制のフェティッシュバー”展翅室”に来てしまったのだった。
ここでは萌子は、ただのオブジェ、装飾品なのだ。確かに簡単なオシゴトだが、話しかけられもせず、全く人間扱いしてもらえないのも結構辛いな、と、萌子は思った。あの男性客はゲイなのか、そんな気もする。モチロン、萌子の存在に気づいてはいるが、こちらに興味はなさそうだった。
しばらくすると、また一人の客がバーに入ってきた。今度は女性だ。スーツ姿の美人で、メガネをかけている。女性はカウンターに座ると、カクテルを注文した。それを飲み終えると、女性はコツコツとハイヒールの音を立て、萌子が全裸で展翅されている壁の方に近づいてきた。
「ふうん、可愛いコじゃない」
値踏みするように萌子のカラダを見回すと、女性はうつむいている萌子のアゴに手を当て、正面を向かせた。
「私も昔、ここでバイトしてたのよ、テンシの」
女性はタバコの煙をゆっくり吐くと、また向こうに行ってしまった。カウンター越しに、女性とシラサキが話しているのが見える。私の事を話しているのだろうか、そうだったらいいな、と、先ほどから何もされないまま全裸で展翅されている萌子は思った。
やがて、男性客も加わり、3人は楽しそうに、フェチ談義に花を咲かせているようだった。ハダカで大の字に固定されている萌子だけが、蚊帳の外だった。そのまま時間が過ぎ、若い萌子も、さすがに身体の疲れを感じ始めた。それに、少しの尿意も感じてきた。
カウンターに座った一人の男が、マスターのシラサキと話をしている。
「ふふふ、そうですか。あれはSMですからね、本格的な」
まだ時間が早いせいか、バーに客は一人しかいない。その二人の会話を、萌子は少し離れた場所から聞いていた。全裸の大の字ポーズで固定されて……。
そう、結局次の日、萌子は会員制のフェティッシュバー”展翅室”に来てしまったのだった。
ここでは萌子は、ただのオブジェ、装飾品なのだ。確かに簡単なオシゴトだが、話しかけられもせず、全く人間扱いしてもらえないのも結構辛いな、と、萌子は思った。あの男性客はゲイなのか、そんな気もする。モチロン、萌子の存在に気づいてはいるが、こちらに興味はなさそうだった。
しばらくすると、また一人の客がバーに入ってきた。今度は女性だ。スーツ姿の美人で、メガネをかけている。女性はカウンターに座ると、カクテルを注文した。それを飲み終えると、女性はコツコツとハイヒールの音を立て、萌子が全裸で展翅されている壁の方に近づいてきた。
「ふうん、可愛いコじゃない」
値踏みするように萌子のカラダを見回すと、女性はうつむいている萌子のアゴに手を当て、正面を向かせた。
「私も昔、ここでバイトしてたのよ、テンシの」
女性はタバコの煙をゆっくり吐くと、また向こうに行ってしまった。カウンター越しに、女性とシラサキが話しているのが見える。私の事を話しているのだろうか、そうだったらいいな、と、先ほどから何もされないまま全裸で展翅されている萌子は思った。
やがて、男性客も加わり、3人は楽しそうに、フェチ談義に花を咲かせているようだった。ハダカで大の字に固定されている萌子だけが、蚊帳の外だった。そのまま時間が過ぎ、若い萌子も、さすがに身体の疲れを感じ始めた。それに、少しの尿意も感じてきた。

