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第2章 絵美の悩み

2023年11月2日　PM4：00

「はぁ・・・」

ため息を一つ。
絵美が漏らした。

「どうしたの、ママ・・・？」
握った小さな手の少女が顔を上げて聞いた。

「な、何でもない・・よ・・・」
力ない声を絵美は返した。

心配そうに見上げる娘の顔を絵美は切ない気持ちで見つめた。

目元が父親に似るようになっていた。
それは喜ばしいことなのだが絵美にとっては複雑な気持ちになる。

一瞬。
愛していた男の面影が重なる。

初めての恋。
そして、永遠の愛を誓い合った男だった。

それが。
不条理な出来事で。

離れ離れになり。
別の男と結婚していた。

唯奈。
娘は可愛い。

世界中で一番。
大切だと思っている。

だからこそ。
夫である宏の仕打ちにタメ息が漏れるのだった。

望んだ結婚では無かった。
唯奈をお腹に宿したことで宏に嫁ぐことを決めた。

それは。
自分の罪でもあるのだから。

「だけど・・・」
絵美は小さな声で呟いた。

「できるなら・・・」
「えっ・・・？」

めざとく聞く幼子の声に我に帰る。

「うぅん・・何でもないの・・・」
切ない表情で無理に口元を綻ばせた。

「ママ・・・」
唯奈は小さな手で絵美の指をギュッとした。

まるで。
母を励ますように。