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【お題小説】浴衣姿のパートさん(13ページ完結)
第1章 【夏風邪】

ムッとしたアパートの一室

三階建ての三階は屋根と天井が近いせいか、とても暑い


夜になっても熱を持ってしまっているようです


たまらず窓に腰かけて、時おりやってくる涼し気な夜風に当たるしかありませんでした



神社は窓の反対側なので直接は見られませんでしたが、ぞろぞろと人が歩いている姿が眼下にひしめき合っています


田舎の小さな街ではありますが、どこからやって来るのかすごい賑わいですね


通路には警察官も立っていて交通整理に立っているほどです



二階の部屋の窓からなら誰かと目が合ってしまいまそうですが、さすがに三階までは誰も首を上げないようで

まるでボクだけ違う世界から覗き見しているみたい


リアルなジオラマ模型を覗いているようですね



冷蔵庫から冷たい飲み物を持ってきて、再び窓枠に腰かけて外界を眺めているとなにやら気になる顔ぶれが……



知った顔です



職場のパートさん、立花さんです

小学生くらいの娘さんとお揃いの浴衣を着てお祭りに来ているようです


ちょうど娘さんがクラスメートらしき友だちと走って行ってしまいました


ぽつんと残された立花さんでしたが、すぐに後ろから若い男性に声を掛けられていました



ナンパされた?



たしかに立花さんは背が低くてくりくりっとした目をしていますのでママさんには見えないのかもしれません



よく見ると若い男性も職場のスタッフでした

大学生のサトル君です


ふたりは少し談笑したあと、すぐに分かれてしまいました


どうやら偶然に出くわしたようです


いや、



しばらくすると立花さんは通路から外れてうちのアパートの植栽の茂みのほうへ近寄ってきました


どうしてこんな暗いところに?


そう思って上から眺めていると、少し間を置いてからさきほどのサトル君も茂みにやって来ました



何やってるんだろう?と思って注視していると


なんとふたりは抱き合ってキスを交わしていたのです!


ちょうど道路からはブロック塀があり誰からも見れませんし、さらに植栽の庭木まで植えられているので多少覗き込まれてもまったく見えないでしょう


上から以外は


そうか、あのふたりそういう仲だったんだ!


ボクは見てはいけないものまで覗き見してしまったようでした



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