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イツキとタマキ 〜本通り商店街〜
第1章 イツキとお絵描き
その日ボクは簡単な作業確認の立ち会いをするだけの仕事でした
店舗のマネージャーをしているボク、ジロウは改装工事の業者さんに店舗の鍵を預けて、いつくかの引き継ぎ事項を済ませていました
天井の塗装、壁紙の張り替え、床のクッションフロアーの張り替えを業者に依頼しています
普段はガラスの棚やら、鉄の什器の上に様々な商品を並べてあるのですが先週の撤去作業で商品はすでに別の場所のコンテナーに預けてあり、お店の中は何も無い文字通りガランとした状態です
作業服の担当者と打ち合わせしているあいだに彼の部下やアウトソーシングに出しているのであろう塗装屋さんなどが脚立を持ち込んで準備に追われていました
業者さんによる改装工事は5日間
そのあとボクたちの搬入作業が待っています
ボクは「それじゃあ宜しくお願いします」と片手を上げて現場を後にしました
ここの店舗はフランチャイズのオーナーさんがいらっしゃいますが、10年ぶりであろう連休をとると聞いています
仲の良いスタッフさんを連れ立って温泉にも行くとおっしゃっていました
ボクも誘われましたが、担当のお店はここだけではないので泣く泣くお断りすることに……
高速道路を乗り継いで、今日はこのままお休みです
まぁ、休日出勤ですね
引き継ぎだけなので楽なものです
家に戻って来たのはまだお昼前でした
契約してある駐車場に社用車を停めて、すぐそばの商店街に向かいます
いまどきの商店街にしては珍しく空きテナントが少ない活気ある商店街です
観光地でもありますので、飲み屋街、風俗街が立ち並ぶ他ではなかなか少ない大きな商店街でした
中華料理屋のオヤジさんに挨拶をして、
薬局のお母さんに果物をわけていただきました
もうすっかり顔見知りです
小さな定食屋さんの前は自転車がすし詰めに並べてあり、ボクは倒さないように慎重にすり抜けて雑居ビルの階段のある裏手にまわります
狭い階段をフゥフゥ言いながら息を切らせて何とか登り切りました
ドアを開けると茶髪でショートヘアの女性が振り返りました
「おかえり、ジロウ」
「ただいま、タマキ」
ボクはタマキの家に転がり込んで半年になろうとしていました