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イツキとタマキ 〜本通り商店街〜
第1章 イツキとお絵描き

「え  一回だけ??」


「そう、 お互いズルズルしたくないでしょう?
 わたし、もうこんなトシだし、相手もいないから
 最期に一回だけ、ジロウ君にお願い出来ないかなぁって?

 こんなおばさん相手じゃあ、ジロウ君も困るだろうけど……」


そんなキワドい会話をしていたら、虫を捕まえたイツキとヒデオ君がこちらに駆け寄ってきました


「じゃあね」



といってショウコさんは立ち去ろうとしたのでボクはイツキの頭を撫でながらショウコさんのほうを見ます


少し離れましたが、まだ声は聞こえるでしょう



「ショウコさぁぁーーーん!
 ボクのほうから、 お願いしまーーーす!」



と大声を出しました



ショウコさんは振り返って、満面の笑みで手を振っていました



そのあと、絵を描きながら頭の中は、全然違うことを考えていました



ボクだけじゃなかったんだなぁ、てこととか


一回だけ、て   それもすごいお願いだなぁ、とか



あと、今までの中でいちばん歳上の人とすることになるのかなぁ、とか


ショウコさんとのさきほどのやりとりの事ばかり考えてしまいました



ぼんやりした時間を過ごしているうちに、あたりは暗くなってきていました


するとヒデオ君が橋の向こうを指差してます



「あ、お母さん!」


その指先の方向を見ると、ちょうどヨシエさんが迎えに来てくれました



「今日はこっちのほうまで来てたのね、ジロウ君いつもありがとうね
 さぁヒデオ、そろそろ帰ろうか?」



この日はここまで


今日のお絵かきは終了です


でもボクの頭の中は、さっきからこの先のことばかり考えていました……





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