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第20章 映画の試写会

一方で、ホテルの大広間の隅の方の席で部員達と見ていた智樹は、壇上で俯きがちに目を伏せる心結の姿を見つめながら、複雑な感情を抑えられずにいた。

映画の撮影の話は、妹として参加した。という話は聞いたが、ベッドシーンなんて初耳である。

心結の「芸能界に入りたいから、もう邪魔しないで」という言葉が、耳の奥に今も残っている。

ただそれで本当に幸せか？と問えば、絶対に違うというのが、心結の表情から伺えた。

助けたいのに、踏み込めない。

本心を話してくれようとしない。

心結が選んだ世界を否定すれば、きっと家族の為に頑張りたい。という希望を無くしてしまうだろう。
だから問い詰めることもできなかった。

本当に、これがココの望んだことなのか……？

会場のざわめきが続く中、智樹は映画が始まる瞬間をただ待っていた。

それでも、心の中では叫び続けていた。

ココ、俺は……

どうすればいい……

ぼんやりと考えていると、心結が隣の席へ戻ってきた。

「さっきベッドシーンをひとみさんの代わりにしたって……本当なのか……？」

心結は目を伏せたまま、小さく呟く。

「うん……上手くできたら、妹役で出演させてくれるって言われたから……」

「大丈夫だったのか……？」

「うん……」

この会場で一番注目されている女優だとは思えないほど、元気がない心結だった。