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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 9

「うーんとアレよ、アレ?」
 茉優が突然訊いてくる。

「なんだよアレって?」
「うーんとねほら、よくおばあちゃんが見せてくれたアレ、覗くとキラキラしてキレイなアレよ」
「あぁ『万華鏡』かぁ」
「あっそうそう『万華鏡』よぉ、わたしさぁ、あの『万華鏡』が大好きでさぁ、娘が生まれてから見せてあげたくて探したんだけどなかなか見つからなかったのよねぇ」
 なんとそう言ってきた。

「実はその『万華鏡』今持ってる」
 そしてさっき母親から形見として貰ったいきさつを話しながらバッグから取出し…
 そのばあちゃんの『万華鏡』を手渡す。

「あぁコレこれぇ、おばあちゃんの『万華鏡』だわぁ、懐かしいなぁ」
 感慨深げに手に持ち、さっそく覗く…

「うわぁキレイ…
 まるで迷宮の中に迷い込んでいくみたいだわぁ」
 そう呟き…

「え、迷宮?」
「うんそうよ、そう、迷宮よ、まるで鏡の中の不思議な世界へ迷い込んでいくみたい」
 鏡の中の不思議な世界…
 その茉優の言葉はあの頃も、そしてあの時も云っていた。

「あ…」
 そしてそう言っている茉優もその自分の言葉に一瞬にしてあの頃の、あの時を思い出したのだろう…
『万華鏡』から目を離して俺の顔を、目を、見つめてくる。

 そして…
『覚えてるの?』
 茉優の目がそう俺に問い掛けてきた…

 だがその見つめ合った瞬間…

「よおしっ次、カラオケ行こう」
 そんな栄ちゃんの不意の言葉にその一瞬の2人の世界が消えてしまった。

「あ、いや、俺は…」
 そうカラオケが苦手であったのだ。

「それにほらばあちゃんが…」
 そしてばあちゃんが亡くなったのを理由にして上手く逃げた。

「そうだよな、そうか、よし、俺達だけで行くかぁ」
 と、周りに声を掛け…

「そうだそう、せっかくだからこのメンバーでグループラインを作ろうぜ」
 その栄ちゃんの声掛けにより、このメンバーでのグループラインを作成する。

「じゃまたな、おやすみ」
 そして俺は別れ、一人で先に帰宅する。

 本当はもっと居たかった…
 いや、思いがけずに茉優という存在に再会できたせいで後ろ髪が引かれる、惹かれる思いであるのだが…

 今、現在の自分の状況を鑑みると、そして、この6年間の自虐的な想いを思い出して…
 浮かれてる場合では無い…
 必死に心を押さえ、自制したのだ。




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