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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 8

  茉優はあの頃から変わっていない様に感じていた。
 確かに今は38歳、いわゆるアラフォーだし、そしてそれなりに老けてはいるのではあるのだが…
 その老け方がその年齢なりの美しさを際立てている様に見えるのである。

 例えば隣で明るく賑やかな存在感を発揮している斎藤弘美は…
 少しふくよかになり小ジワやシミが少しだけ見え、どう見てもアラフォー世代にしか見えない。

 だけどこの茉優は、ほぼ体型は変わらず、ゆるみ、シワ、シミの類は俺には見えなかった…
 いや多分、憧憬の想いの昂ぶりのせいもあるのであろうが、存在感そのものが昔のままに感じて見えているのだと思う。

「ほらぁじゃあさぁ、お互いに独身なんだしさぁ、久しぶりの再会に浸りながら飲みなさいよぉ」
 斎藤弘美が明るく言ってくる。

 あの頃からこの斎藤弘美の明るさには助けられ、いや、アシストされていた…
 そしてここにいる同級生の皆も、俺と茉優の昔の関係は知ってた。

「もぉ弘美ったらぁ、からかうのは止めてよぉ」
 だが茉優からもそんな万更では無い様な感じもする。

「はいはい、とりあえずほら18年振りの再会にカンパイ」
 そう言うと…
「おおそうだ、そう、勇人との久しぶりの再会にカンパーイ」
 誘ってくれた栄ちゃんもそのノリに便乗し、皆で再会を乾杯してくれた。

 この乾杯により俺の心の中に存在していた秘かなプライドが…
 つまりは過去の失敗からの挫折の想いと、田舎の同級生達に対する見栄というプライドが、すうっと消えて心が軽くなり…

 この同級生、幼馴染達との再会に…

 青春の全ての存在である元彼女の茉優との再会に…

 そしてこの田舎への帰省による過去との再会に…

 さっきまで抱いていた変な心の壁が崩れたように軽くなったのである。

 そして心からこのプチ同窓会という酒宴を楽しめる様になっていく…

「おばあちゃんは本当に残念だったわね」
 茉優はまたそう言ってくれた。

「あ、うん、まぁ年齢もあるから仕方ないよ」

「ほら、わたしも昔、そうあの頃はよくおばあちゃんにも会っていたから…」

「そうだったな…」

 そう、あの昔、あの付き合っていたあの頃…
 茉優はよく家に遊びに来ていた。

「えぇと、ほら、アレ、アレなんていったっけ、うーんとアレよ、アレ?」
 すると突然、茉優が訊いてくる。


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