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girlslove
第4章 【爪痕】

「抱いてない…って言ったら嘘になる、かな」
淳太らしからぬ、聞き取りにくいトーン
でもようやく聞けた
「あ、でも、今すぐどうこうしようとは思わないというか、全然、今の関係のままで良いんだ、お前も大事な時期だし、ちゃんと待つし……って俺なに言ってんだ、ちげぇよ、タイミング的に今じゃねぇんだ、だから……今まで通りで頼む」
かなり、しどろもどろだな
パニクってるの丸わかり
ここで引いてしまうと聞き出した意味がないから
「そっか、勿論、今まで通り、私は淳太を同期としてオーナー代理として尊敬してるし、支え合っていけたらって思ってるよ、恋愛とは全然別……」
「わかってるよ」
「それに私、今好きな人が居る」
「だからわかってるって!それもちゃんと、わかってるっていうか、気付いてるよ、馬鹿野郎、勝手にフルな」
「いや、長期戦で来られても困るから先に伝えておこうかと」
「お前、性格悪くなったな」
そう思って諦めてくれれば良い
せめてもの優しさだと、うんと後になって気付けば良いよ
「ごめんね、それくらい今の人が大事なの」
本当にごめん……何様だって感じだけど
万が一、この先、せりさんが嫉妬したり勘違いしたりして悲しい想いに触れて欲しくないから
先に帰るね、と伝えてお店を出た
これが吉と出るのか、凶と出るのかは分からない
淳太を傷付けて良いはずないのに
周りがどうのこうのって結局、自分の事しか考えてないよね
自分だけがスッキリしたいんだ
淳太の言う通り、性格悪くなったな……
やっぱりギクシャクしちゃうのかな、と思ったが
びっくりするくらい淳太はいつも通りだった
だから誰一人、私たちの間にあった事など知る由もない

