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女性のための犯され短編集
第19章 旅先で出会った男に犯される

「ぁ…」

「──…」

 現れたのは30代後半と思しき男だった。

 長身で、ガタイがよく、黒いシャツの袖をまくった腕から刺青がちらりとのぞく。

 煙草をくわえ、どこか危険な色気を漂わせる落ち着いた雰囲気だ。ゆるく癖ついた髪が額に落ち、ミステリアスな印象を強めていた。

 彼女はその存在感に一瞬、息を呑んだ。

「おい、また店の酒に手ぇつけたろ」

 バーテンダーが男に文句を言う。

「うるせえ、マスター。どうせ余りもんだろ」

 男は低く渋い声で返し、煙草の煙を吐きながらカウンターの端に腰を下ろした。どうやらバーテンダーと知り合いらしい。

「気まぐれに戻ってきたかと思えば、勝手に店に居座りやがって」

「金は適当に渡してるだろ」

「その金の出どころもわっかんねーから気持ち悪ぃ。いったい何して稼いでんだよ」

「……言う必要ねえよ」

 ひと通り言い合いをすませた後、大人の余裕を感じさせる仕草で、少し気まずそうにしている彼女をちらりと見た。

 彼女は目を逸らしたが、男は口角を上げて笑った。

「誰だ?キレイな顔した女だ」

「え?いえ、そんなっ……わたしはただの旅行者です」

「旅人か?こんな何も無い所に珍しいな」

「ええ……観光地のガヤガヤは嫌いなので。たまには良いかと思いまして」

 彼女は疲れを隠せていない声で返していた。それでなくとも、相手の色気にのまれそうだ。

 男はマスターに何か囁き、彼女の前に琥珀色の液体が入ったグラスが置かれた。

「これ飲めよ。サービスだ」と男が言う。

 綺麗な色だが、強い酒の匂いが鼻をついた。彼女は断ろうとしたが、男の視線とマスターの「飲んどけよ」という態度に押され、断りきれずに口をつけた。


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