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禁断の果実
第5章 婚約者
「もう、私は大丈夫よ…」
「なら、良かった…」
でも、内心私は決して大丈夫な状態ではなかった。
あの時の悪夢を見るのだ。
夜も何度も目が覚めては悪い汗を流していたのだった。
しかし、こんなことは響には言えない。
そんな事を考えながら珈琲を飲んでいた時だ。
響が私の直ぐ隣に身を寄せて来た。
私はビクリとしてしまう。
レイプ事件があってから私は人から身体に触れられたり、抱き締められたりすることに恐怖を感じていたのだ。
直ぐ隣に座られるのもちょっと怖かった。
響は私の隣にピタリと吸い付くように座った。
響は私よりも背が高い。
私の身体が硬直していくのが分かった。
響が私の顔を覗き込むようにして見ている。
そして、私の肩に手を回し抱き締めて来た。
私の身体が一瞬ビクリとしてしまう。
響にこう言う。
「前澤くん、何かしら?手を放してくれない?」
「先生、キスしてもいい?」
そう言うと響はキスをしようとして顔を近づけて来た。
だが、私は顔をよけて響から身体を離した。
私は響の腕を振り払いソファーから立ち上がった。
そして、こう言ったのだ。
「前澤くん、もう帰る時間よ…」
私はそう言うと響を玄関まで送ってドアを開けた。
響は何か言おうとしている。
だが、何も言わずに響は開かれたドアを見て出て行った。
私の心はこの時、響を求めていたのだった。
しかし、生徒と教師なのだ。
それは、許される関係ではなかった。