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雨が好き
第29章 ナイトアクアリウム
【ナイトアクアリウム】

「みなとさんを一晩・・・お貸しください」
9月に入った、ある日の夕方、『みなと町』で、蒼人さんが、お父さんにこう言って頭を下げた。

お父さんがわかりやすくうろたえる。

「あ・・・ひ・・・一晩・・・と言うと?」

私もその横であわわと、動揺していた。
一晩・・・お泊り・・・。
そう連想して、なおさらどうしていいかわからなくなってしまう。

確かに、この前、『ついてきてくれるか?』『ついていきます』って・・・言った、けど。
蒼人さんが急にそんなこと言いだすなんて。

「ナイトアクアリウムというのがありまして」

どうやら、隣町の水族館で夜に水族館に泊まれるイベントがあるというのだ。
それを聞いて、ちょっとホッとした。
お父さんも、あからさまに安心したような顔をしているところを見ると、同じ気持ちだったようだ。

「水族館・・・ならいいか」

ちらりと私を見た。お父さん、まだ私が男の人が苦手なことを気にしてくれているのだろう。
でも、私自身は、この間、海に行った時から、なんだかちょっと怖さが減った気がしてるので、それほど心配はしていないのだが・・・。
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