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雨が好き
第38章 カウンターの客
そう思ったのも束の間、パタン、とカウンターのお客さんが
読んでいた文庫本を閉じた。

顔を上げて私の方に向ける。
それを見て、私は声をあげそうになった。

顔に見覚えがあった。

昨日、病院ですれ違った女性(ひと)・・・。

ショートカットで目元がキリッとしている。
黒っぽいウィンドブレーカーにゆったりとした濃い茶色のパンツ
今日も、かっこいい、感じ。

なんで?
・・・偶然?

あんまりお客さんをまじまじと見るのは・・・と思うけど、
その人も私の方をまっすぐに見ている。
今更、目をそらすのもおかしな気がする。

かといって、『昨日お会いしましたよね』などと
声を掛けるのも・・・変な気がした。

どうしよう・・・
悩んでいると、その人が、ニコッと微笑んだ。

「聞いた通りの人・・・。あなたが、みなと・・・ちゃんね?」
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