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雨が好き
第56章 星月夜
【星月夜】

その日、水際さんは酔いつぶれて【天使の羽】で眠ってしまった。
叩いても揺すっても起きなかったので、
困った私は、お父さんに助けてもらうことにした。

お父さんは前に『みなと町』に来た水際さんのことを、
ちゃんと覚えていた。

「みなとのお友達だっけ?」
「蒼人さんの、妹なんだ」

多分、お父さんは、水際さんの頬に流れた涙の跡に気づいたと思うけど、
何も言わないで、水際さんをおんぶしてくれた。

「うちにつれて帰ろう・・・これじゃあ、家に帰れないだろう」

水際さんを背負ったお父さんと私は、夜の街を『みなと町』を目指して歩くことになった。
どこからか、虫がリーン、リーンと鳴いていた。

空を仰ぐと、満月が高いところに居座っていた。
空の端には、星たちもキラキラと煌めいている。

秋の空はなんだかすっきりしていて、
夜でもとても、高かった。
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