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雨が好き
第65章 山茶花
私は、蒼人さんの手をその上からぎゅっと握っていた。
その手が、すごく冷たくて、びっくりする。

苦しまないで
どうか、どうか・・・

ここに、いるから
私、いるから

蒼人さん・・・

どれくらいそうしていただろうか。
蒼人さんの手が、少しだけ温まった頃、
ポロリと、涙が落ちた。

ぽろぽろ、ぽろぽろ

堰を切ったように。
我慢していた、全部、流すように。

「僕は・・・弱い・・・」

絞り出すような声。
そして、顔を上げた。
涙で、ぐしゃぐしゃになった、蒼人さんの顔。

初めて見る、彼の弱い所。

その目が、私を見る。
私の、私達の『今』に彼がちゃんといるのがわかった。

胸がいっぱいになった。
私の傍に、彼がいる。
戻ってきて・・・ちゃんと戻ってきて。

私は彼を抱きしめていた。

抱きしめた私の視線の先に、
山茶花が揺れていた。
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