この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
雨が好き
第65章 山茶花

「大学を辞めようかと悩んだときも、黙って僕の話を聞いてくれました。
一緒にあれこれ就職の方法を探す手伝いをしてくれたりも。
本当は怖かったけれど・・・怖かったけど」
そこで、しばらく、蒼人さんは黙ってしまった。
怖かったけど・・・決断した。
多分、それは、栞さんがいたから。
彼女と一緒に生きていけると、信じていたから。
胸が、とても苦しくなった。
なんでだろう。
本当に、本当に苦しい。
「だから、彼女を失ったとき、僕はまるで大地を失ったみたいに感じてしまった。
どこに居ても、ふわふわしてて、現実感も何もなくて。
水際に聞いたかもしれないけど、ずっと泣いていた。
雨が降った時は、彼女の最期の言葉を思い出して、後悔で押しつぶされそうだった」
膝の上で、両の指を組んでいる。ぎゅっと握りしめていて、悲鳴を上げるように皮膚が赤くなっていた。俯いた視線が地面に落ちている。
蒼人さんの心。どこかに行ってる。
ぐるぐるここじゃないどこかを巡っていて・・・巡っていて・・・。
苦しそうにしている。
蒼人さんが・・・
蒼人さん・・・
私が怖い夢にうなされたとき、手を握ってくれた
汚れた私を、汚された私を、それでも抱きしめてくれた
知らない私、見たことのない景色、おひさまのような温かさを、
私に、いっぱい教えてくれた。
蒼人さん・・・
一緒にあれこれ就職の方法を探す手伝いをしてくれたりも。
本当は怖かったけれど・・・怖かったけど」
そこで、しばらく、蒼人さんは黙ってしまった。
怖かったけど・・・決断した。
多分、それは、栞さんがいたから。
彼女と一緒に生きていけると、信じていたから。
胸が、とても苦しくなった。
なんでだろう。
本当に、本当に苦しい。
「だから、彼女を失ったとき、僕はまるで大地を失ったみたいに感じてしまった。
どこに居ても、ふわふわしてて、現実感も何もなくて。
水際に聞いたかもしれないけど、ずっと泣いていた。
雨が降った時は、彼女の最期の言葉を思い出して、後悔で押しつぶされそうだった」
膝の上で、両の指を組んでいる。ぎゅっと握りしめていて、悲鳴を上げるように皮膚が赤くなっていた。俯いた視線が地面に落ちている。
蒼人さんの心。どこかに行ってる。
ぐるぐるここじゃないどこかを巡っていて・・・巡っていて・・・。
苦しそうにしている。
蒼人さんが・・・
蒼人さん・・・
私が怖い夢にうなされたとき、手を握ってくれた
汚れた私を、汚された私を、それでも抱きしめてくれた
知らない私、見たことのない景色、おひさまのような温かさを、
私に、いっぱい教えてくれた。
蒼人さん・・・

